DOEFF_vol2
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2030年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0205健康寿命が伸びることで、健康的な80代が自分らしい生活を送り続けることが当たり前の世の中になる。老年医学は、高齢者が自分らしく生きることを目指す医学です。大阪大学では40年以上の歴史を誇ります。高齢になると臓器一カ所だけが悪くなるのではなく、体内のネットワーク全体が弱るものですが、そのメカニズムを解き明かすことで老化を遅らせる研究を行っています。たとえば要介護状態と、健康な状態の中間「フレイル」という状態がありますが、その段階で治療を始めると健康状態に戻しやすいことなどがわかってきました。フレイルに関係する診療科は老年科だけではなく、さまざまな専門家が関係します。この学際的な分野で中核的な働きをするのが私たちです。栄養面、運動面、いろんな部分に関与しながらフレイルに陥るのを防ぎます。学際的な観点で言うと患者さんがその人らしく生きるのに足りない機能を補うために工学部と連携しながら、手、足、目、耳、認知などの機能をサポートするロボットを開発するようにもなるかもしれません。2030年頃には、フレイル対策は相当進んでいるはずです。フレイルと並ぶもうひとつの研究対象が認知症です。将来的に認知症は治る病気になるかもしれません。その前に、予防法の充実も重要事項で、発症数を現在の3分の1以下にしたい。2030年であれば、高い確率で実現できているはずです。私たちの研究室ではワクチンを使って予防する方法も研究しています。薬を毎日飲む代わりに半年に一回のワクチンなら、薬を減らせて患者さんは楽です。それにワクチンのおかげで20年後に起こる病態を30年後に先送りできたら大きな違いです。人生の終盤における、身体や心の自由がきかない期間をぐっと短くできるわけですからね。現時点では健康寿命は70代前半くらいですが、これを80歳代に伸ばしたい。それが私の目標です。Hiromi Rakugi2007年より、大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科学(2015年、改組に伴い老年・総合内科学)教授。加齢を原因とするさまざまな疾患や身体機能の変化を解明し、健康寿命を延ばすことを目標としている。特に高齢者高血圧を専門とし、日本老年医学会が発行する「高血圧診療ガイドライン2014年度版」においても高齢者高血圧の項目を担当。2015年には、同学会 理事長に就任。死の直前まで、自分らしく生きる世の中に。健康的な日々を送る80代がもっと増えている。2030prospective view樂木 宏実大阪大学 大学院医学系研究科内科学講座 老年・総合内科学 教授01

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