DOEFF_vol3
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2030年にはこうなってる?DOEFF Vol. 03投薬による骨粗しょう症の改善、より高性能な人工関節、力学的な刺激による筋肉と骨の増強。運動器のサポートがさらに充実し、90歳を過ぎてもスポーツを楽しめる時代がやってくる。私たちは今、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」の予防に力を注いでいます。運動器の衰えが原因で「歩く」「立つ」といった日常動作さえ困難になってしまうロコモは、認知症の悪化などの弊害を引き起こします。いつまでも健康に長生きするためには、ロコモ対策が欠かせません。そのためにさまざまな研究を重ねてきました。たとえば、骨粗しょう症対策です。ここ20年ほどで、骨を強くするための薬が次々に登場しています。私自身は、骨粗しょう症などの患者さんの骨に埋め込むことで強度を高める人工骨「ネオボーン」を開発し、実用化までこぎつけました。人工関節の高性能化にも目を見はるものがあります。現在の人工関節は20年ほどで交換が必要ですが、2030年にはほとんど一生ものの人工関節が登場するはず。さらに今後は、すり減った軟骨を回復する再生医療で研究も進んでいくでしょう。これら最先端の研究だけでなく、これまで「なんとなく効果がある」とされてきたものを、科学的に裏付ける研究も大切です。たとえば、身体に振動を与える健康機器の効果を測定してみたところ、1秒間に30~40回の振動を与えるものだと、短時間で筋肉や骨を増強し、神経の再生を促進する効果さえあることが分かりました。こうした力 学的な刺激によって運動器の機能を向上させる手法は、今後もっと広く普及するはずです。ほかにも漢方薬や健康食品の有効性を科学的に見直す研究などもスタートしています。研究にかかる費用も安く、結果が出れば誰もがすぐに利用できることから、極めてコストパフォーマンスに優れた研究です。最先端の研究と並行して、積極的に進めて行きたいです。いずれにせよ、2030年までには、90歳になっても誰もがスポーツを楽しめる世界を実現したい。私たち整形外科の最大の目標です。Hideki Yoshikawa1999年より大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科学)教授。骨肉腫の研究を皮切りに、骨形成機序の解明、人工骨を用いた骨再生研究などに従事。現在は、低コストで安全な軟骨再生医療の実用化に向けた研究に取り組んでいる。健康機器や漢方薬を医学の視点から再評価する。吉川秀樹大阪大学 大学院医学系研究科器官制御外科学講座 整形外科学 教授042030prospective view90歳を超えてもスポーツを楽しめる。09

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