DOEFF_vol3
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102030年にはこうなってる?患者さんと医師、研究者などがともに研究を進めていく。海外の関係者とも、自動翻訳機を介したリモート会議で、自由にやりとりできる。どうすれば医学の発展が社会に与える恩恵を最大化できるのか。これが私たち「医の倫理と公共政策学教室」の研究テーマです。「医の倫理」と聞くと、医学の発展に倫理の立場からブレーキをかける仕事だと誤解する方もいらっしゃるでしょう。「生命倫理」と呼ばれる分野が、時にはそうした役割を担ってきたことは確かです。しかし、私たちはむしろ、医学の発展を加速させるための仕組みを作りたいと考えています。まず大切なのが、研究を進めるにあたって守るべきポリシーの設計です。ゲノム医療を例に考えてみましょう。この分野では、研究者がそれぞれ集めたゲノムデータを共有することで、円滑に研究が進んでいきます。一方で、ゲノムデータは「究極の個人情報」で、適切に保護される必要があります。情報の共有と保護。これらをうまく両立させるポリシーの整備が必須です。人々が提供したゲノムデータはどう保護されるのか。ゲノム情報には誰がどのような条件下でアクセスできるのか。研究の過程でゲノム提供者が特定の病にかかりやすいことが判明したら、それを本人に伝えるべきか。いずれも簡単に結論は出せませんが、粘り強く議論を重ねることが大切です。ここで優れたポリシーが設計できれば、提供者からの理解も得やすくなり、研究がスムーズに走り出します。もうひとつ、医学の発展を加速させるために必要世界中の患者と医師がともに研究を設計する。2030prospective view加藤和人大阪大学 大学院医学系研究科社会医学講座 医の倫理と公共政策学 教授05

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