DOEFF_vol3
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2030年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0305人工透析に必要な機器がポータブル化し、日常生活を営みながら透析を受けられる。透析患者が趣味や旅行を楽しむことが当たり前の時代になり、生活の質が大きく向上する。現在、国内で約33万人もの患者さんが人工透析を受けています。新たに人工透析が必要となる患者さんの数は年間で約4万人。高齢化が進むことで増加ペースはさらに高まると言われています。これに歯止めをかけることが、私たちの使命です。そのために予防医学の観点からアプローチを進めています。新規の透析患者さんのうち、約4割が糖尿病の合併症として腎不全に陥る患者さんです。これを防ぐには、地域の開業医と連携しながら、糖尿病の症状を早期段階で押さえ込んでいくことが何よりも重要です。他にも腎臓に負担をかけない生活習慣の周知にも力を注いでいます。新薬の開発にも取り組んでいます。期待しているのはオートファジーに着目した創薬です。オートファジーとは、細胞内の老廃物をリサイクルする仕組みのこと。私たちは、オートファジーの働きが低下すると腎臓に悪影響が及ぶことを明らかにしました。この発見から生まれたのが「オートファジーの働きを正常化することで腎機能を回復させる薬」というアイデア。現在、実用化に向けて製薬会社と共同研究を進めています。新規の透析患者さんを減らす取り組みと並行して、すでに人工透析を受けている患者さんの生活の質を高める術も考えなければなりません。患者さんにとって最大の負担が、拘束時間の長さです。1回に4~5時間かかる治療を週に数回も受けていたら、社会復帰は難しい。こうした状況を改善するために、透析装置のポータブル化が期待されています。2030年には、身体に装着して持ち運べるくらいコンパクトな透析装置が登場するでしょう。そうなれば透析をしながら、趣味や仕事に打ち込めます。人工透析という困難からひとりでも多くの患者さんが解放されるように、これからも様々なアプローチで研究を続けていきたいですね。Yoshitaka Isaka2015年より大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授。学生時代から一貫して、腎疾患の研究に取り組んできた。近年では、オートファジーと腎疾患の関係に注目。2013年には腎臓をはじめとした臓器に悪影響を及ぼす「損傷したリソソーム(細胞内の胃腸にあたる器官)」の除去・修復をオートファジーが担っていることを発見。これらの知見をもとに、腎疾患を回復させる薬の開発を目指す。持ち運びできる透析装置が普及する。透析を受けながら自由に生活できる。2030prospective view猪阪 善隆大阪大学 大学院医学系研究科内科学講座 腎臓内科学 教授01

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