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062030年にはこうなってる?アルファ線の力でがん細胞を攻撃する薬が実用化されている。健康な細胞には傷をつけずに、がん細胞だけを死滅させるので副作用も少ない。がんは注射一本で治る病気になる。「Atoms for Medicine(原子の力を医療に)」。これが私たち核医学研究室の基本的なコンセプトです。「原子の力」というと、核兵器や原子力発電が頭をよぎって、なかなか医療との結びつきを想像できないのが普通だと思います。そこでまずは、原子の持つエネルギーと医療とがどう関わってきたのか、その歴史を振り返ってみましょう。レントゲン博士が X 線を発見したのが 1895年。X線は比較的すぐに医療へと応用され、皆さんもご存知のレントゲン写真が生まれました。1940年代には「ヨウ素 131」の原子核から放出されるベータ線が甲状腺がんやバセドウ病の治療に使われるようになります。1970年代には原子から放出されるガンマ線を利用したがん検査が始まりました。1990年代になると、陽電子放出核種を利用した「PET検査」がスタート。「FDG」はがんの診断薬で、日本人薬学者の井戸達雄博士が開発した薬の名称です。体内に注射された FDG は、がん細胞に集まり、原子から陽電子を放出します。あとは特殊なカメラ(PET)で撮影すれば、がんの位置をピンポイントで特定できます。1990年代以降にカメラの性能が大きく向上したおかげで、今では1cmほどの小さながんも見つけだせるようになりました。昨年1年間での原子の力を利用して注射一本でがんを治す。2030prospective view畑澤 順大阪大学 大学院医学系研究科放射線統合医学講座 核医学 教授02

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