DOEFF_vol4
12/24

102050年にはこうなってる?免疫力を高める薬が登場し、健康寿命が大幅に伸びることで、いくつになっても現役で働けるようになる。高齢者は自らが培ってきた経験を生かし、若者とともに社会を支える。私たちの研究室では、独自に開発した「HVJ envelope vector (HVJ-E)」という粒子を用いた薬の開発に取り組んでいます。HVJ-Eの特徴は、免疫機能を活性化させること。がんになったマウスにHVJ-Eを投与すると、がんに対する免疫が高まり、正常な細胞はそのままに、がん細胞だけが死滅していきます。2009年からは、人での臨床研究をスタート。メラノーマや悪性胸膜中皮腫の患者さんを対象とした臨床試験でも、腫瘍を小さくする効果が証明されました。副作用の少ない新たながん治療薬として、製薬会社との提携も視野に入れながら、さらに研究を進めていきます。免疫を活性化させるHVJ-Eは、がん治療以外への応用も期待できます。例えば、花粉症のマウスにHVJ-Eを投与すると症状が緩和されることが明らかになりました。花粉症を根治する薬の開発も夢ではありません。脳の免疫細胞を活性化する効果もあるため、アルツハイマー病をはじめとする認知症の予防薬としても有望です。さまざまな可能性を秘めたHVJ-Eですが、開発した私たちですら、ここまでのポテンシャルは予想していませんでした。そもそもHVJ-Eは、病気を抑制する遺伝子やタンパク質を細胞内へと送り届ける「運び屋」です。ところが研究の過程免疫を活性化して100歳でも健康に。金田 安史大阪大学 大学院医学系研究科ゲノム生物学講座 遺伝子治療学 教授HVJ-Eという大きな可能性

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る