DOEFF_vol4
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DOEFF Vol. 0411Yasufumi Kaneda1998年より大阪大学医学部(現 大学院医学系研究科) 遺伝子治療学 教授。遺伝子を生体の細胞内へと導入することで、病態を解明したり治療への応用を目指す遺伝子治療学の研究に従事する。細胞内へとスムーズに遺伝子を導入するベクター「HVJ-E vector」を開発。自ら中心となってベンチャー企業ジェノミディアを立ち上げ、量産化に成功。2003年、文部科学大臣賞「産官学連携推進功労者」に選出。でHVJ-Eそのものに病気を抑える力があることがわかってきた。文字通り、嬉しい誤算でした。ちなみにHVJ-Eは運び屋としても極めて優秀です。細胞内に遺伝子をはじめとした分子を運ぶ物質をベクターと呼びますが、HVJ-Eは従来のベクターよりも効率的に細胞内へと分子を届けられます。HVJ-Eが持つ免疫活性化機能と、本来の運び屋としての機能を組み合わせれば、さらに大きな効果が期待できます。HVJ-Eにがんの増殖を抑制する遺伝子を組み込めば、さらに効率的にがん細胞をアタックできるはずです。ほかにも、結核菌を攻撃するタンパク質と、免疫を活性化するタンパク質を組み込んだHVJ-Eで、結核の予防薬を作ろうという研究もスタートしています。大量生産が可能なこともHVJ-Eの大きな強みです。私たちは2002年に大阪大学発のベンチャー企業、ジェノミディアを立ち上げ、HVJ-Eの量産化に成功。現在はさまざまな研究の現場でHVJ-E が使われています。多くの研究者がHVJ-Eをどう活用してくれるのか、非常に楽しみです。2030年 にはHVJ-Eをベースにしたさまざまな薬が登場し、薬を飲むだけで手軽に免疫力を高められるようになっているはず。あらゆる病気を薬ひとつで未然に防げる時代の到来です。そうした薬は、平均寿命と健康寿命とを同時に押し上げるでしょう。現在、人間の免疫機能はおよそ100年で限界を迎えると言われています。100歳を超える人のほとんどが肺炎などの感染症で亡くなるのは、免役機能の衰えによるものです。免疫を活性化する薬が普及して、感染症のリスクを抑えることができれば、100歳を超えて長生きすることが当たり前になるかもしれません。仮に肉体的な衰えはあったとしても、脳を活性化してアルツハイマー病をはじめとした認知症を予防していれば、頭脳の明瞭さは保てるはず。そうなれば80代や90代でもまだまだ現役です。2050年には、若者が高齢者を支えるだけではなく、長年に渡って培った経験を生かして、高齢者が若者の活躍をサポートする。HVJ-Eがそんな未来の礎となれば最高です。HVJ-Eの無限のポテンシャルを最大限に引き出すために、これからも研究を重ねていきます。免疫を高める薬でがんも認知症も抑え込める。「免疫機能の限界」を超えて

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