DOEFF vol5
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2050年にはこうなってる?08Hiroyasu Iso2005年より大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 教授。循環器疾患をはじめとする生活習慣病の疫学調査を通じて、日本人における生活習慣病の危険因子の特定を目指している。同時に予防対策の医学的・医療経済学的な評価にも取り組んできた。環境省が主導する「エコチル調査」では大阪ユニットセンター長を務める。より健康的なライフスタイルが根付き、健康寿命も大きく伸びる。65歳以上になっても地域社会に貢献したり、スポーツを楽しむことが当たり前になる。公衆衛生学の「公衆」とは「社会全体」を意味します。衛生とは読んで字の通り「生命を衛まもる」こと。つまり、公衆衛生学とは「社会全体の健康をまもる学問」と言い換えられます。社会を健康へと導くために欠かせないのが、予防対策です。例えば高血圧や糖尿病、脂質異常、肥満などの生活習慣病を予防し、必要に応じて発症前や発症早期の段階で医療へとつなげ、心臓病や脳卒中といった重篤な疾患を防ぐことが重要になります。さらに一歩踏み込んで、生活習慣病の原因を探ることも私たちの重要な仕事です。そのためには、衣食住や労働環境、経済状況といった社会的要因が健康に与える影響を、継続的な健康調査によって解き明かす必要があります。私たちの研究室では予防と研究の一体化をモットーに、複数の地域を対象として数10年から半世紀というスパンで、予防対策の推進とその後の追跡調査を実施してきました。秋田県井川町では1963年から自治体などと協力して高血圧対策をスタート。その結果、比較対象地区と比べて、血圧の平均値や脳卒中発症率などが大きく引き下げられました。今後はこれまで得られた調査結果をベースにして、さらに効果的な予防対策を提案していきます。2011年からは10万人の新生児とその両親を13年間に渡って調査する「エコチル調査」も環境省の主導で始まりました。調査結果の分析が進めばどのような因子が出生前から人間の健康を左右するのかが明らかになるはずです。ここで得られた結果は、具体的な施策提案として社会に還元したい。誰もが健康的な暮らし方を選択できる社会の実現に向けて、各関係者をリードしていくことも医師の使命です。日本人の3人に2人が65歳以上になるとされる2050年には、若者が高齢者を支えるのではなく、高齢者自身が生きがいを持って社会に貢献する。そんな未来に向けて研究を進めていきます。生活習慣病の根本的な原因を突き止める。磯 博康大阪大学 大学院医学系研究科社会医学講座 公衆衛生学 教授誰もが健康的な暮らしを選択できる社会に。08

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