DOEFF vol5
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2050年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0509被災地へ医師を運ぶのは、ヘリではなくドローン。患者のパーソナルデータが詰まったウェアラブル端末から電子カルテを引き出し、個人と病態に応じた治療が現場から始められる。高度救命救急センターの前身となる「特殊救命部」が大阪大学医学部附属病院に設立されたのは1967年。日本初の重症救急に特化した医療施設として産声をあげました。それから半世紀以上に渡って、臓器損傷や骨折、熱火傷などの外傷から、脳卒中や心筋梗塞などの疾患まで、診療科の枠を超えて、あらゆる緊急患者の治療にあたってきました。当センターの最大の強みは、阪大医学部の各科との間に築かれた、緊密な連携体制です。必要であれば24時間いつでも専門医介入を要請できます。さまざまな分野の研究成果を、すぐに救急救命の場に応用できることも強みです。例えば重症救急患者の腸内細菌の変化から患者の予後を予測する研究を他に先がけて取り組んできました。再生医療も救急の現場に取り入れていきたいですね。なかでも注目しているのが、脊髄損傷などで傷ついた中枢神経や損傷した臓器を再生する技術です。ケガをした時点から治療に移るまでのタイムラグが短いほど予後が良くなることがわかっているため、救急医療に組み込めれば、より多くの患者さんを救えるでしょう。このようにあらゆる分野の研究成果を駆使して、総力戦で患者さんを救うことが私たちの変わらぬスタンスです。今後はドローンやAIなどを活用して、災害などへの対応力もさらに高めていきたいですね。2050年には、ヘリが着陸できない被災地にも、大型のドローンですぐに医師を派遣できるようになるでしょう。その頃には電子カルテを含めたパーソナルデータを個人が持ち運ぶ時代になっているはずです。そこから得られるデータと、コンパクト化した検査機器による診察データをAIが即座に付き合わせて、その場で医師が治療を開始する。これまで救えなかった命をひとつでも多くつなぎとめるために、救急医療は進化をし続けます。Takeshi Shimazu2011年より大阪大学大学院医学系研究科 救急医学 教授。救急医療のエキスパートとして、阪神・淡路大震災、病原性大腸菌O-157の集団感染、JR福知山線脱線事故など、大きな災害や事故の第一線で救急患者の治療に取り組んできた。大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターのセンター長も務める。他分野との連携こそ、何よりの強みです。嶋津 岳士大阪大学 大学院医学系研究科生体統御医学講座 救急医学 教授より多くの命を救う、より多くの命を救う、救急医療を目指して。救急医療を目指して。

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