DOEFF vol5
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102050年にはこうなってる?アジア各国で耐性菌の封じ込めが進む。インフラが整備されることで、耐性菌による河川の汚染も改善され、子どもたちが安心して遊べる水辺がよみがえる。私たちは今、「ポスト抗菌薬時代」の入り口に立っています。1928年に史上初の抗菌薬であるペニシリンが発見されて以来、人類と細菌は絶え間ない戦いを続けてきました。新しい抗菌薬が開発されると、それに対する耐性を備えた細菌が出現する。さらに対抗すべく、新たな抗菌薬が生まれる。そんないたちごっこに終わりが見えたのは2000年代前半です。この頃から、新薬の開発が明らかに停滞し始めました。一方で、ほとんどの細菌に有効なことから「感染症治療の切り札」とされてきたカルバペネム系抗菌薬さえも効かない「スーパーバグズ」とよばれる耐性菌が世界各地で発生。今後もよほどのイノベーションがない限り、これらの耐性菌に有効な薬は開発されないでしょう。とはいえ現時点で耐性菌による死者が急増しているわけではありません。先進各国は、耐性菌の封じ込めに概ね成功しています。日本でもまれに院内感染のアウトブレイクが起きる程度で、街中に耐性菌はほとんど存在しません。一方、耐性菌が爆発的に増殖しているのがアジアの発展途上国です。街のいたるところが汚染され、すでに多くの人が耐性菌に感染しています。それでも、耐性菌は毒性自体が強いわけではないので、健康な人が感染しても発症にいたらないケースがほとんど。重症化する危険が高いのは様々な治療を薬剤耐性菌による被害を食い止める。朝野 和典大阪大学 大学院医学系研究科感染制御医学講座 感染制御学 教授

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