DOEFF vol5
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DOEFF Vol. 0515目しました。腸の免疫というのは実に不思議で、腸管内には異物である腸内細菌がウヨウヨいるのに、免疫細胞はそれを攻撃しません。ということは、免疫細胞と腸内細菌を隔てるバリアーのようなものがあるのではないか。そう仮説を立てて研究を進めるうちにLypd8というタンパク質を発見しました。これが腸内細菌の動きを止め、腸内細菌の細胞内への侵入を防ぐ役割を担っていたのです。この仕組みがうまく働かなくなると、細胞内に腸内細菌が入り込んでしまい、それを察知した免疫細胞が正常な細胞ごと腸内細菌を攻撃してしまう。これが炎症生腸疾患の基本的なメカニズムだと考えています。未だ解明できていない部分も残っていますが、いずれは炎症生腸疾患の全貌を明らかにして、根本的な治療方法の確立に貢献したい。研究者としての最大の目標です。これからの僕のもうひとつの目標は、後進を育て阪大医学部のDNAを次世代に。ることです。岸本先生、審良先生から受け継いだDNAを、次の世代につないでいきたいと考えています。研究とは、本当に終わりがない営みで、僕もいまだに毎日が試行錯誤の連続です。それに基礎研究には失敗もつきもの。ひとつの答えを得るために100の失敗をすることはざらです。ときには1000回失敗して、そもそも仮説自体が間違っていたということだってあります。だからこそ、これから研究者を目指すみなさんに伝えたいのは、継続することの大切さです。ときには「今日はダメでも、明日はなんとかなる」と楽観的に、ときには「絶対に結果を出してやる」と負けん気を発揮して、失敗を恐れずに研究を続けてほしいですね。僕自身、研究したいことはまだまだたくさんあります。「炎症生腸疾患の研究が終わったら、次は何を研究しよう」と、いつも考えています。誰も気がつかなかった真実を解き明かし、ゼロからイチを生み出す。医学研究ほどクリエイティブな仕事を、僕は知りません。研究という歓びを、これからも味わい続けていきたいですね。1992大阪大学医学部卒業、同大医学部附属病院での臨床補助の研修に従事1998大阪大学 大学院医学系研究科 博士課程修了兵庫医科大学 助手1999大阪大学 微生物病研究所 助手2003九州大学 生体防御医学研究所 教授2007大阪大学 大学院医学系研究科 予防環境医学 教授2011大阪大学 大学院医学系研究科 免疫制御学 教授(継続)2016第53回ベルツ賞 受賞2019大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 拠点長Biography

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