DOEFF vol5
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2050年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0505センシング技術の発達によって、一人ひとりに最適な運動の量や強度を提案できるようになる。VRやAR技術によってスポーツの楽しみ方も多様化する。スポーツ医学には大きくふたつの役割があります。まずはアスリートをサポートすること。ここでの主な目的はケガの治療と予防です。現在、センシング技術とAI技術とを組み合わせて、選手のケガを予測する技術の開発に取り組んでいます。もうひとつの大きな役割はスポーツを通じて、多くの人々を健康へと導くことです。スポーツを含めた身体活動をフィジカルアクティビティ(PA)と呼びますが、ほとんどの人はPAが足りていません。関節や筋肉、骨といった運動器の健康を維持するには、適度な量と強度のPAが必須です。スポーツなどによって適度な刺激を与えなければ、筋肉や骨は衰えていきます。子どもの場合だと、PAが足りなければ、強い筋肉や骨を育てることができません。そうかと言って、闇雲にスポーツに打ち込むと関節を傷つけてしまう。では、一体どれくらい身体を動かすのが、最も健康にいいのか。画一的な基準を設けるのではなく、一人ひとりの年齢や体型、ライフスタイルなどに合わせて、適切な量と強度のPAを示す仕組みをつくることが私たちの目標です。必ずしも競技としてのスポーツである必要はありません。「今週は2日間、エレベーターではなく階段を使いましょう」「骨と筋肉に刺激を与えるために、一日に3分間だけ縄跳びをしましょう」といった、細かな指示を出せるようにしたいですね。そのためにはPAの量と強度を正確に計測するセンシング技術の向上が不可欠です。2050年にはウェアラブルを超えて、体から発生する電磁波から、心拍数や体温、脳波までを読み取るセンシング技術が実用化しているはずです。VRやAR技術もさらに発展し、室内でも屋外にいるかのようにスポーツが楽しめるようになっているでしょう。身体を動かす喜びを実感しながら、どんどん健康になれる。スポーツが健康のための何よりの処方箋になる未来が、すぐそこにまで迫っています。Ken Nakata2013年より大阪大学大学院医学系研究科 スポーツ医学 教授。スポーツによる外傷や障害の治療に取り組んできた。ウシの皮膚から作られたコラーゲンを移植することで、損傷した半月板を治療する医療技術を世界で初めて開発。実用化を目指している。2006年から、阪神タイガースのチームドクターも務めている。どれくらいの運動が必要かを、細やかに提案する。中田 研大阪大学 大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座 スポーツ医学 教授スポーツこそ何よりの処方箋。

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