DOEFF vol6
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2050年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0609脳科学が教育に応用される。いつ何を学べばどんな能力を伸ばせるかが科学的に証明され、一人ひとりに最適化されたカリキュラムを組める。私の研究テーマは脳です。なかでも脳の表面を覆う大脳皮質を対象としてきました。視覚野や運動野といったさまざまな領域から構成される大脳皮質は、ヒトの「知」そのものと呼べる重要な部位です。これがどのように作られ、どのように働くのか。「どのように作られるか」については、答えをつかみつつあります。脳の奥深くにある脳室帯と呼ばれる部位で大脳皮質を構成する細胞が作られ、それが脳の表面まで移動する仕組みを解き明かすことができたのです。このとき細胞は人体の設計図である遺伝子に則って配置されますが、これがうまくいかないと、てんかんなどの脳疾患の原因になることもわかってきました。一方で「どのように働くのか」については、まだ謎ばかり。視覚野など個別の領域については、どのように神経回路が結びつき、どんな分子がやりとりされるのかが解明されてきましたが、それぞれの領域をどのように統合しているのかはほとんどブラックボックスです。だからこそ研究のしがいもある。2050年までには、細胞レベルでも分子レベルでも、その実態を明らかにしたいですね。大脳皮質の仕組みが解明されれば、自閉症などをはじめとした脳疾患の治療も進むはずです。それにとどまらず、その成果はさまざまな分野へと波及するでしょう。例えば、教育です。今でも新しい言語をネイティブ話者と同等に身に着けるなら平均で7歳までといったように、学習と脳の発達の関連性は示されていますが、これがよりクリアになるでしょう。一人ひとりの脳の発達に応じて、「この時期には数学を、次は国語を」と、現代とは比べものにならないほどパーソナライズされた学習カリキュラムを組めるようになるはずです。人間のあらゆる営みの根幹ともいえる脳の仕組みを理解することは、人類にどんな変化をもたらすのか。それが明らかになる日を待ち望んでいます。Makoto Sato2013年より大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学 教授。学部生時代は数理モデルを使って脳の仕組みを解明しようと工学部へと進むが、実際の人の脳を研究するために医学部へと転身。以来、細胞や分子といった物質のレベルから脳の構造を明らかにすることめざし研究に取り組んできた。連合小児発達学研究科長を兼任する。大脳皮質の仕組みを完全に解明する。佐藤 真大阪大学 大学院医学系研究科解剖学講座 神経機能形態学 教授脳科学が脳科学が教育に進化を。教育に進化を。

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