DOEFF vol6
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DOEFF Vol. 0615ないにせよ、食欲不振による栄養状態の悪化が体重や筋肉の減少を招き、それが寝たきりの原因になっていることに変わりはないからです。栄養療法という分野を、さらに掘り下げることで、多くの人々の力になりたいですね。栄養療法をはじめ、私が取り組んできたのは臨床研究です。つまり基礎研究の先生方が打ち立てた仮説を、患者さんを対象として証明するのが私の仕事。「なんだそれだけか」と仰る人もいるかもしれませんが、証明というのはみなさんが思うよりもずっと大変な作業です。仮説通りの結果が得られることが稀な上に、臨床研究での証明には膨大な時間がかかります。研究をデザインしてから結果が出るまでに、10年以上がかかることも珍しくはありません。ひとりの研究者がそれだけの歳月を費やして、ネガティブな結果しか得られな医学の力を患者さんへ届けたい。いこともあるのだから残酷です。それでも私が臨床研究に取り組むのは、医学の力が患者さんへと届く瞬間をこの目で見届けたいから。それに苦労が多い分、やり遂げたときの達成感もひとしおです。狙い通りの結果が得られたときの感動は忘れられません。これからもずっと研究を続けていきたいですね。自ら望んで選んだ道ではなかったものの、医師になったことに後悔はありません。創造的でやりがいのある仕事です。ただ最近少し気がかりなのは、治療方針を定めたガイドラインに縛られ、医師という仕事の本当の面白さを実感できていない若手が増えていることです。ガイドラインの遵守はもちろん重要ですが、それだけでは合格点を取るために勉強しているのと変わりません。繰り返しになりますが、医療に満点はありません。9割はガイドラインを守りながらも、自分の専門分野ではその先の未知の領域へと大胆に踏み込める。そんな医師こそが、医療の未来を切り開いていくのだと確信しています。1985大阪大学医学部卒業同大附属病院での研修に従事1986公立学校共済組合近畿中央 外科医員1989大阪大学医学部 外科学第二教室 研究生1993コロンビア大学Presbyterian癌センター 研究員2000大阪府立成人病センター 第一外科医長2008大阪大学 大学院医学系研究科消化器外科学 教授2018日本外科代謝栄養学会 理事長2020大阪大学医学部附属病院 病院長Biography

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