DOEFF vol6
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2050年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0605胎児用の遠隔手術ロボットが世界中に普及。先天性の疾患は、生まれる前に治療することが当たり前になる。小児外科医として、生まれつきの疾患を持った子どもへの内視鏡手術に力を注いできました。子どもへの手術には高い技術が求められますが、内視鏡を使えば術後の回復も早く、成長後も傷跡が目立ちません。しかし、いまだに救えない子どもたちもいます。彼らは先天性の疾患によって、生まれてすぐに命を落としたり、一命を取りとめたとしても重い障がいを負ってしまう。そんな子どもをひとりでも減らすために推進しているのが、胎児への手術です。アメリカでは母親のお腹の中にいる段階での手術によって、呼吸困難を引き起こし死に至ることもある横隔膜ヘルニアや、下半身に一生マヒが残る脊髄髄膜瘤といった先天性疾患の症状が改善したとの報告があります。これを日本でも本格的に導入していきたい。国内の小児外科をリードしてきた大阪大学の務めです。今後は、日本だけでなく世界中の子どもたちにも手を差し伸べていきたいですね。小児外科は、医療格差が極めて大きな分野です。例えば、人口600万人のラオスには、小児外科医がたったの数人しかいません。同じように多くの発展途上国では専門医が足らず、虫垂炎のような治療が簡単な病気で命を落とす子どもたちが後を絶ちません。こうした状況を変える手段として期待されているのが、手術支援ロボットを活用した遠隔手術です。現在使われているロボットは、そのほとんどが大人向けですが、10~20年以内には新生児や胎児の手術に特化した小型ロボットも開発されるでしょう。通信技術の発展速度を考えれば、2050年には、日本からアジアやアフリカの胎児を遠隔で手術できていても何ら不思議ではありません。未来そのものである子どもたちの命を救うことで、2050年のさらに先の未来を明るく照らす。それこそが私たち小児外科医の使命だと考えています。Hiroomi Okuyama2014年より大阪大学大学院医学系研究科 小児成育外科学 教授。新生児外科疾患、胆道系疾患、呼吸器疾患といった専門性の高い小児外科疾患の治療に注力。内視鏡外科手術を新生児疾患へ一早く導入したほか、臓器移植などの先進医療の小児外科への応用も積極的に進めている。研究面では横隔膜ヘルニアや新生児消化管穿孔を専門とし、これら疾患の治療指針を作成してきた。地球の裏側にいる子どもをリモートで治療する。奥山 宏臣大阪大学 大学院医学系研究科外科学講座 小児成育外科学 教授胎児への手術で胎児への手術で先天性疾患を治す。先天性疾患を治す。

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