DOEFF vol7
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2050年にはこうなってる?09DOEFF Vol. 07AIを活用した脳波検査によって認知症の兆候を発見し、原因となるタンパク質を除去する薬を投与することで発症前に抑え込む。現在、日本には約500万人の認知症の患者さんがいると言われています。認知症の予備軍である軽度認知障害(MIC)の数も同じく約500万人。東北三県の人口にも匹敵する数の患者さんと、その家族を苦しめるこの病から、ひとりでも多くの人を救うことが私たちの最大の目標です。喫緊の課題は、認知症を患っても生活の質(QOL)を落とさずに暮らせる社会をつくること。大阪大 学では、転倒や脈拍の変化を察知するIoTセンサーや、双方向の会話が可能なロボットなどを活用し、患者さんの安全な生活をサポートする仕組みづくりを進めています。MICもしくは軽度の認知症であれば、ひとり暮らしであったとしても、住み慣れた地域で快適に生活を続けられるような社会を、行政とも連携しながら実現したいですね。患者さんをこれ以上増やさないためには、予防も大切です。ここで重要なのは認知症の兆候を、発症前につかむこと。近年の研究では、脳波をAIで 解析することによって、それが可能になるのではないかと注目されています。脳波の計測自体は簡単かつ安価であり、一度AIさえ開発してしまえば、低コストで高精度な検査が可能になるでしょう。 2030年頃には実用化され、日本どこでも気軽に早 期診断が受けられるようになっているはずです。治療薬の開発も急ピッチで進んでいます。アメリカに続いてわが国でも、認知症の原因とされるタンパク質「アミロイドβ」を取り除く新薬の承認申請が開始されました。他の認知症においても、正確な超早期診断の技術とより効果的で安価な薬が登場するでしょう。2050年には、そうした早期診断技術と治療薬を組み合わせることで、認知症は未然に防げる病気になっているはずです。誰もが最後まで充実した人生を謳歌できる。そんな未来のために、研究を加速してまいります。Manabu Ikeda2016年より大阪大学大学院医学系研究科 精神医学 教授。脳と心の相関に関する臨床研究に従事し、記憶や情動、幻覚、妄想などの認知症における神経基盤を明らかにしてきた。熊本大学教授時代には「熊本モデル」と呼ばれる認知症医療システムを確立。AIやIoT、多職種訪問を組み合わせた独居認知症者の支援にも力を注いでいる。鍵を握るのはAIと新薬︒池田 学大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 精神医学 教授認知症という病は認知症という病は予防、治療できる。予防、治療できる。

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