DOEFF vol7
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DOEFF Vol. 0711Tamotsu Yoshimori2010年より大阪大学 大学院生命機能研究科 細胞内膜動態研究室及び医学系研究科 遺伝学 教授。ノーベル賞を受賞した大隅良典博士らとともに、20年以上前からオートファジーの研究に取り組んできた第一人者。オートファジーの活用をめざして設立されたベンチャー企業、AutoPhagyGOの技術顧問も務める。ンダムに分解する役割です。細胞内では新たなタンパク質や細胞小器官がつくられ、結果的に細胞の中身が少しずつ入れ替わっていきます。このサイクルによって、細胞は常にフレッシュな状態に保たれ、病気などにかかりにくくなるのです。最後の発見は、私たちの研究グループによるもので、細胞を傷つけるウイルスなどを破壊する役割になります。オートファジーには、広い意味での免疫のような側面があるのです。実際に、オートファジーの働きが弱まることで、感染症や糖尿病、脂肪肝、がん、腎症、心不全など多岐にわたる疾患の発症リスクが上がることがわかっています。さらに私たちは、Rルビコンubiconというタンパク質がオートファジーの働きにブレーキをかけていることも突き止めました。Rルビコンubiconは加齢に伴って増加するため、老いることで生じるさまざまな不調も、オートファジーの機能低下によって引き起こされていると考えられます。その証拠に、動物実験でRルビコンubiconの遺伝子を破壊したところ、寿命はなんと1.2倍に。活動量の低下も抑えられることがわかりました。人間でも同じことが起こります。つまり、いつまでも健康に長生きしたいと思ったら、いかにオートファジーの働きを活発に保つかが重要になるわけです。そうした観点から、私たちはオートファジーを活性化する成分を含むサプリメントの開発などに取り組んできました。Rルビコンubiconの働きを抑える新薬候補も特許申請済みです。さらに生活習慣を考える上でもオートファジーに注意することが大切になります。カロリー制限や、運動量の増加、和食を中心とした食生活への移行など、ちょっとした工夫でもオートファジーを活性化できますからね。2050年までにオートファジーの力を100パーセント引き出せるようになれば、人類の寿命が120歳くらいまで伸びていてもおかしくありません。健康寿命も伸びて、90歳台になっても仕事に運動にと、アクティブでい続けられるようになるはずです。オートファジーが活発な状態を保っていると、認知症のリスクを軽減できることもわかっています。いつまでも健康で、人生を最後まで楽しみ抜く。多くの人が理想とするそんな生き方を叶える鍵を、オートファジーが握っています。オートファジー活性化が長生きの秘訣!

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