DOEFF vol7
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14されて、研究を再開。日本に導入されたばかりの「ノックアウトマウス」という特殊技術を活用し、CXCL12が欠損したマウスを作製して、世界に先駆けてCXCL12がB細胞の産生に深く関わっていることを証明できたのです。諦めずに研究を続けて良かった、と心の底から思った瞬間でした。私にとって幸運だったのは、その後の研究でCXCL12が、造血幹細胞の制御にも関わっていることが明らかになったことです。CXCL12が、学生時代から抱き続けてきた「なぜ造血幹細胞は骨髄でのみ維持されるのか」という謎を解く鍵になるのではないか。そう睨んで35歳にして、基礎研究一本でやっていくことを決意。以来、大阪府立母子保健総合医療センター、京都大学と所属を変えながらもCXCL12をテーマに基礎研究に取り組んできました。その結果発見したのが、骨髄だけに存在し、CXCL12を多量に産生するCAR細胞徹底した証明が    真実を導く。ネズミとハエとクラゲのおかげです医学の実験で用いられるノックアウトマウスとは、特定の遺伝子を欠損させたマウスのことです。私の場合はCXCL12を欠損させたノックアウトマウスと通常のマウスと比較しました。その結果、ノックアウトマウスではB細胞が大幅に減っていることがわかった。つまりこれで「CXCL12がB細胞の産生に関わっている」と証明できるわけです。骨髄でCXCL12を発現する細胞を調べる際には、CXCL12を分泌するCAR細胞でGFPというタンパク質を産生するマウスを作製しました。GFPにレーザーを当てると発光するので、ほかの細胞と明確に区別できるようになります。ちなみに、この技術を教えてくれたのはハエの研究者。さらにGFPはクラゲから抽出されたものですから、ネズミにハエにクラゲにと、私の研究は多くの生き物たちに支えられてきた、ということができそうです。医学の研究に欠かせない生き物とは?Column通説を覆し骨髄の謎を明らかに。

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