DOEFF vol7
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2050年にはこうなってる?05DOEFF Vol. 07生後すぐでもゲノム解析が可能に。遺伝子に関するリテラシーも向上し、小学生のうちから遺伝子の「個性」に合わせた生活習慣を身につけるようになる。治せない病気を治せる病気へ。この言葉をモットーに、私たちは日本では数少ない子どもへの心臓移植手術など、難易度の高い治療に果敢に挑んできました。近年では、効率的かつ網羅的に遺伝子上の変異を調べる「全エクソームシークエンス」検査にも積極的に取り組んでいます。これによって、従来は原因不明とされてきた小児難病の多くが、遺伝子に由来するものだと分かってきました。今後さらに検査数が増えれば、解析精度はさらに高まるはず。そこで得たデータは、さまざまな疾患の病態解明や治療方法の確立に役立つでしょう。将来的にはさらに高い精度で遺伝子の変異を調べられる「全ゲノムシークエンス」も用いられるようになるでしょう。データの解析にはAIを活用したい。2050年頃には検査機器も進化し、身体の表面から遺伝子レベルの検査ができるようになっていてもおかしくありません。子どもが生まれたら、すぐにシールのような検査機器を貼り付けて、その日のうちにすべてのゲノム情報が明らかになる。それをもとに将来的にどのような病気にかかるリスクがあるのかを予想し、具体的にどのように対処するべきなのかを医師が意思決定する。そんな光景が当たり前のものになるはずです。それにともなって、ゲノムに対するリテラシーも向上させなければなりません。子どものうちから 自分のゲノム情報についてしっかり学べば「遺伝的に糖尿病にかかりやすいから、食事の栄養バランスには特に気をつけよう」といったように、それぞれに最適化された生活習慣を身につけやすく なるはずです。そうなれば生涯に渡って、さまざまな病気にかかるリスクを軽減できます。すべての子どもが大病にかかることなく成長し、結果として健康寿命も大きく伸びていく。小児科医として、そんな未来を実現したいと願っています。Keiichi Ohzono2002年より大阪大学大学院医学系研究科 小児科学 教授。専門は内分泌骨代謝。全身の骨や軟骨に異常をもたらし、極端な低身長、高身長といった症状を引き起こす低フォスファターゼ症の研究に注力してきた。阪大病院では総合周産期母子医療センター、難病医療推進センター、子どものこころの診療センターでセンター長を務める。あらゆる病気のリスクが生まれた瞬間にわかる︒大薗 恵一大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 小児科学 教授ゲノム解析とAIでゲノム解析とAIで子どもの健康を促進。子どもの健康を促進。

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