DOEFF vol8
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茂呂 和世大阪大学大学院医学系研究科感染症・免疫学講座 生体防御学 教授この10年、科学界では「要素還元主義」についての考え方が大きく変わってきています。従来、病気の原因は最終的にはひとつに絞り込めるとされてきました。そのため、ひとつの因子をなくしたノックアウトマウスで研究するのが近年のスタンダードです。しかし、複数の要素が組み合わさって原因になっているとしたら、要素還元主義では説明しきれなくなります。牧場で育った子はアレルギーを発症しないとよくいわれます。それには牧場の環境、つまりその子が生きている環境そのものに理由があるのではないか。生活習慣や体質、さらには考え方、それに起因するストレスなども関わっているのではないか。これまで科学は、身体の中の因子以外の要素を無視することで進歩してきました。しかしこの10年ほど、すべてひっくるめて研究する機運が高まっているのです。これまで医学では、アトピー性皮膚炎だったら皮膚のバリア機能を破綻させる分子を調べることに大きな労力を割いてきました。ところが最新の研究では、皮膚の全体を構成する細胞群をシングルセルRNAシーケンスと呼ばれる手法でまとめて解析します。組織全体を俯瞰して観察すれば、注目すべきは免疫細胞ではなく上皮細胞だとか、本当に見るべきものがはっきりします。この発想は臓人の生活歴のすべてをデバイスで取り組み、その情報をモジュール化。アレルギーの治療は、個々人の遺伝要因、生活環境を踏まえてカスタマイズされる。102050年にはこうなってる?アレルギーはアレルギーは治せる時代に。治せる時代に。

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