DOEFF vol8
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▶A1.ワクチン接種はかなりのペースで進んでいます。ただ、ウイルス自体はなくならないため、コロナ禍以前の状態に戻るのはいつかという予測は難しい。感染者が少なくなればウイルスが変異するチャンスも減るため、収束へ向かうはずではありますが…。▶A1.2倍以上の感染力があるとされるデルタ株が急速に広がると、首都圏から感染が再拡大する恐れも。ただ、10~11月に国民の60%以上がワクチン接種を終えるという政府目標が達成されれば、いよいよ年明けには収束の方向に向かっていると思います。▶A2.インフルエンザにかかったときなどと同様に、誰もが自分自身の体調の変化に気を配ることが大切です。コロナの厄介なところは、感染していても無症状の場合があること。人にうつしてしまうリスクを減らすためにも、マスクが重要となります。▶A2.外出は最低限にとどめましょう。飲食店では、大人数の会食を避けるべきです。そもそも一人であってもリスクはゼロではありませんから。しかし、ランニング中のように、屋外で周囲に人がいないときにまで過度な防護策をとる必要はないでしょう。▶A3.今回のワクチンは異例の速さで開発されました。それは技術革新によるものであり、工程が省略されたわけではありません。とはいえ血栓症などの副反応リスクは残っています。ワクチンは健康な人に打つものなので、安全性の確保が大事です。▶A3.現在、非接種者が感染の再拡大を招いてしまっています。接種が進んでいる諸外国では、すでに人が密集する場所以外ではマスクをしていません。日本もいずれそうなるはず。ワクチンの効果が持続する期間は、さらなる検証が必要です。▶A4.世界中では100種類くらいのワクチン開発が並行して進んでいます。この短期間でひとつの疾患をさまざまな分野の専門家が解析し、その内容が世界中で共有される状況は、歴史上でも類を見ません。研究者としては貴重な機会といえます。▶A4.飲み薬の開発に期待しています。インフルエンザに対するタミフルのようなものです。ただ、治療薬を今回のワクチンのような速さで作るのは難しい。どんな化合物がウイルスに有効か、できるかぎり迅速に見つけ出すことが重要となります。▶A5.病院も感染の予測を基に対策を立てていたとは思いますが、第4波では難しかったということでは。日本では市中感染のデータが不足している印象です。リアルタイムで状況をつかめれば、変異株に対しても、より有効な対策がとれるかもしれません。▶A5.急増した重症者に対応する体制が施設と人員の両面で整っていませんでした。これらは全国的な問題ですが、大阪は特に変異株の影響を受けてしまった。行政が経済へのダメージを恐れ、判断が遅れた印象もあります。今後の教訓を得られた出来事でした。▶A6.今回ほどの感染規模となると予測は難しい。昨年は一人もインフルエンザの患者さんを診察しなかったのも想定外です。次にパンデミックが起きた際に大切なのは、今回の教訓を生かすこと。ウイルスに対抗する技術の進化により、対策は可能と考えます。▶A6.時期の予測は難しいですが、今後もパンデミックはあり得るでしょう。ウイルス学の見地から懸念しているのは、鳥インフルのウイルスが変異して強毒化し人でも流行すること。野生動物との接触は予期せぬ病気を人にもたらすことがあります。健康な身体に打つのだから、ワクチン接種は慎重に行うべき。” “Photo: CDC/Hannah A Bullock; Azaibi TaminPhoto: CDC/Hannah A Bullock; Azaibi Tamin上田 啓次大阪大学 大学院医学系研究科ウイルス学 教授中神 啓徳大阪大学 大学院医学系研究科健康発達医学 寄附講座 教授※本記事は2021年6月のインタビューを基に構成しています。※本記事は2021年6月のインタビューを基に構成しています。DOEFF DOEFF Vol. 08Vol. 081717

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