DOEFF vol8
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脳の修復力神経再生シート神経の保護および再生促進末梢神経若齢アペリンAPJ受容体髄鞘を構成する細胞分化髄鞘修復老齢修復力低下Keyword末梢神経再生シートナノファイバーは、髪の毛の1000分の1ほどの細さ。メッシュ状の シートは非常に柔軟で、身体の中で自然に分解されます。脳や脊髄などの中枢神経において、神経回路は傷つくとしばしば自然に修復しますが、加齢によりその能力は衰えていきます。村松里衣子准教授(当時)、山下俊英教授(分子神経科学)らの研究グループが明らかにしたのは、衰退した脳の修復力が回復するメカニズム。アミノ酸の集合体であるアペリンが、細胞のAPJ受容体を活性化させ、神経回路の「髄鞘」という構造が修復されることを発見しました。髄鞘の機能低下はさまざまな脊髄疾患に関連しています。今回の研究結果により、多発性硬化症など、髄鞘が損傷した疾患に対する治療薬の開発も視野に入ってきたのです。髄鞘が修復するメカニズム。細胞の分化能力の低下は、体内におけるアペリン量の減少によるものでした。末梢神経障害に対する従来の医療機器は、神経の「保護」のみを目的として使用範囲は限定的でした。新たな治療法を見出したのは、田中啓之特任教授(運動器スポーツ医科学)らの研究グループ。NIMS(物質・材料研究機構)と共同で開発した薬剤含有シートは、末梢神経に直接巻きつけることで、「保護と再生」の2つのはたらきをします。このシートはナノファイバーメッシュによる神経の「保護」に加え、「再生」に重要な薬剤を持続的に供給。製薬メーカーの参画で商用規模での生産も行えるようになっていて、治験も始まっています。国内に数十万人の患者さんがいるとされる手根管症候群などの新たな治療デバイスとなるのも夢ではないでしょう。20Keywordメンテナンスで加齢を克服。絆創膏のように巻くだけ。

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