DOEEF vol9
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2050年にはこうなってる?DOEFF Vol. 0909ていません。理想を言えば、集中治療病床をもっと増やして、国や学会が全国をコントロールするといい。病院のICU(集中治療室)をつなぐネットワークの構想も関係者の間で共有されていて、2050年には実用化の可能性も十分あるでしょう。それは、対応に慣れた医師が経験の少ない病院に遠隔で助言する仕組みを含みます。集中治療で最も大切な「タイミング」を逃さず、どの病院でも同じ水準で処置に当たれるのがポイントです。実をいうと、ICUには人員配置の基準は定められていますが、能力の規定はありません。スペースと機器があれば事足りるはずもなく、本来はそれを操る医療者のスキルが問われるべきです。熟練した医師を一定数、育成するには期間がかかります。30年ぐらいのスパンで考えたほうがいい。コロナ禍があったからこそ、集中治療の未来を真剣に考える機運が高まるよう願っています。私の専門は急性呼吸不全の治療、いわゆる人工呼吸療法です。新型コロナとの関わりが深い領域ですが、私の研究室が取り扱うのは個々の病気ではなく「症候群」になります。具体的には急性呼吸窮迫症候群と呼ばれるもの。全身の炎症による臓器不全がその原因ですが、特効薬はありません。そこで私たちが取り組んでいるのは間葉系幹細胞による治験です。おそらくコロナの後も、新たなウイルス性肺炎は登場するでしょう。呼吸不全という病態に対して、ウイルスが異なっても共通するメカニズムは何か。それを追究しています。新型コロナの重症患者に使われるECMO(体外式膜型人工肺)について、阪大はそれまでも急性心不全や心原性肺水腫の治療で活用し、豊富な経験がありました。だから今回のコロナ対応でも特段緊張することなく平常運転。ポイントはいかに合併症を引き起こさないか。そのための管理です。現在、国内の人工呼吸器の数は正確には把握され遠く離れた病院間でICUのネットワークを構築。ノウハウを持つ側の病院がリアルタイムで助言する。全国規模で管理能力の底上げにもつながる。Yuji Fujino2013年より大阪大学大学院医学系研究科 麻酔・集中治療医学 教授。集中治療全般、特に急性呼吸窮迫症候群に対する人工呼吸法が主たる研究領域。痛みのメカニズムの解明にも取り組んでいる。「麻酔科学は全身管理学」をモットーに、手術室、集中治療室、疼痛医療部門の協力体制の下、後進の育成にもあたっている。﹁テクノロジー﹂と﹁人﹂のタッグが集中治療室の光景を変える︒藤野 裕士大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座 麻酔・集中治療医学 教授ICUネットワークで、ICUネットワークで、次の「危機」に備える。次の「危機」に備える。

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