DOEEF vol9
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102050年にはこうなってる?未来のイヤホンは音楽を楽しむだけのものではない。難聴を防ぐ機能が付加されたヘルスケア機器となる。ウォーキングのお供に最適。音は、空気の振動です。人間の聴覚はとても敏感で、3メートル先の蚊の音が聴こえるほど。この小さい音を察知する際、内耳の「蝸牛」の有毛細胞が揺れる幅は0.1ナノメートルです。1ミリメートルの1000万の1という微小な揺れが電気信号に変換され、脳に送られることで、私たちは音として認識します。そのプロセスにおいて、信号を大きくするため「増幅器」が働くことも特筆すべきでしょう。極めて精緻なこれらのメカニズムを解明するとともに、詳細がわかっていない難聴の原因も突き止めたい。私の研究人生は、内耳の神秘に導かれてきました。現在、日本人の約1割が難聴であり、糖尿病の患者数に匹敵します。ではどの程度から「難聴」なのでしょうか。軽度だと、新聞をめくる音が聴こえなくなり、それが進行すると会話が難しいと感じるようになる。70歳で約半数、75歳を過ぎると約7割が加齢による難聴になります。生まれつきの難聴は1000人に一人。医学的な見地では、先天 性の疾患としてはかなり率が高く、ことばの獲得 や会話、脳の発達への影響は小さくありません。一方で、自閉症の子どもは聴覚過敏に悩まされることも知られています。要するに、聴こえは生活の質に直結するのです。さらに難聴は、認知症の強いリスクでもあります。快適な生活は、快適な生活は、「聴こえ」のケアから。「聴こえ」のケアから。日比野 浩大阪大学大学院医学系研究科薬理学講座 統合薬理学 教授

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