DOEEF vol9
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線維が転移をガード。転移する頻度が高いことで知られるすい臓がん。すい臓の周りには線維組織がとても多く、がんが転移するには、それらの線維を壊して全身をめぐる血管やリンパ管にたどりつく必要があります。原田昭和大学院生、菊池章教授(分子病態 生化学)らの研究グループは、すい臓がんに多く 発現している「Arl4c」というタンパク質に、線維を分解する酵素が集まることをつきとめました。さらに、Arl4cの働きを抑える治療薬「アンチセンス核酸」を開発。マウスを用いた実験で転移が抑制されることも明らかとなりました。この薬はピンポイントにがん細胞に集まるため、実用化されれば、副作用の少ない薬として大いに活躍するはずです。Keywordがんの転移Arl4cがん細胞すい臓血管アンチセンス核酸治療群細胞膜無治療群Arl4cDOEFF Vol. 0919がん細胞を狙い撃ち。これまで甲状腺がんに対して行われてきたのは放射性ヨウ素を用いたベータ線治療です。しかし、転移を伴う難治性の患者さんでは十分な効果が得られないことがありました。ヨウ素に似た性質を持つアスタチンなら、ベータ線よりエネルギーが高いアルファ線を放出し、届く範囲も狭いため、周辺の被ばくを抑えながらがん細胞をより効果的に狙い撃ちできます。動物モデルの検証は進んでいましたが、渡部直史助教(核医学)らの研究グループは、難治性分化型甲状腺がんの患者さんを対象にアスタチン化ナトリウム注射液の医師主導治験を開始。外来の注射一回で、負担が少なく、高い治療効果が得られる革新的な抗がん剤治療の実現に向け、大きな一歩を踏み出しました。アルファ線治療KeywordArl4cの働きを抑え、がん周辺の線維を断ち切る「ハサミ」を減らすアンチセンス核酸。線維が維持されると、転移しにくくなります。静脈内に投与したアルファ線治療薬アスタチンがα線を放出し、がん細胞を破壊。進行がんにも大きな効果が期待できます。アルファ線治療薬アスタチン(²¹¹At)²¹¹Atα線

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