DOEEF vol9
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DOEFF Vol. 0907Noriyuki Tomiyama2010年より大阪大学大学院医学系研究科 放射線医学 教授。最新の画像診断機器を駆使した研究に数多く取り組む。近年はAIの応用に力を入れ、企業との共同研究を進めている。画像をもとに針穴から体内に管などを入れる低侵襲な最新技術「IVR」に注目し、さまざまな疾患の治療にもあたっている。師とAIの関係は、名探偵シャーロック・ホームズと相棒ワトソンの関係になぞらえることができるでしょう。AIが登場した頃、数年後に放射線科医にとって代わると予想した人もいましたが、見事に外れました。とはいえ、今もAIにサポートしてもらえる部分はあります。胸部CTで肺結節を自動的に検出するAIが、放射線科医の見落とし防止に利用されているのがその例です。また、CTでの被ばくを考慮してX線の線量を下げると、画像は粗くなってしまいますが、AIはそれを鮮明に再構成してくれます。将来は、優秀なAIが人間と共存しているでしょう。現在、企業と共同で全身を網羅的に診断できるAIの開発にも取り組んでいるところです。2050年には、身体を一回スキャンするだけで即座にがんを突き止めるのも夢ではありません。がん検診で胃カメラも検便も必要ない時代の到来です。患者さんの負担を軽減しながら、いかに簡便に正しく診断するか。その後の的確な治療に結びつけるためにも、画像診断はたいへん有用です。今はひとつの診療科で治療が完結する時代ではありません。カンファレンスでさまざまな専門的立場の者が集まり、ディスカッションしながら方針を決めるのが主流です。そこで放射線科が果たす役割は大きいと感じています。放射線科は機器の進化と二人三脚。CTやMRIに続く次世代の機器が登場することを期待しています。「究極のCT」と呼ばれるフォトンカウンティングCTは実用化間近です。医療機器メーカーの研究開発の努力には頭が下がります。画像診断装置を用い、皮膚から針穴を通して治療する最新技術「IVR」にも注目してほしいです。最大の売りは低侵襲。IVRもデバイスの進化が目覚ましく、カテーテルやコイルがどんどん細くなって、身体の隅々にまで届くようになってきました。がん細胞に光を照射して治療する画期的な「光免疫療法」では、深部にある病変に対しては光ファイバーを体内に奥深く入れる必要があります。私の研究室の得意技は、画像を見ながら針を刺して、正確に管を導けること。まだ緒に就いたばかりの治療法ですが、その進化に貢献できたらいいですね。技術革新で患者さんの負担はもっと減らせる︒

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