Spne Center i ・大阪大学大学院医学系研究科整形外科学教授・九州大学生体防御医学研究所病態生理学部門教授・イェール大学整形外科・九州大学医学研究院先端医療医学部門准教授・九州大学医学研究院特任助教授・慶應義塾大学医学部大学院博士課程修了・総合せき損センター整形外科医師・佐賀県立病院整形外科医員・九州大学医学部卒業留学ました。損傷を受けた脊髄では、細胞に再生を働きかける物質が出ています。しかし、そこに移植された幹細胞の反応がいまいち鈍いのです。過酷な環境下では、幹細胞も自分の身を守ることで精一杯で、組織の生存に関わるシグナル以外は受け止めないからと考えられます。修復に向けて本当はもっと働いてほしいのに、守りに入ってしまう。細胞も「生き物」ですから、それはそれで理にかなっているわけです。なかなかこちらの期待通りにはならず、もどかしい思いもしました。とはいえ、幹細胞の働きが生着環境に大きく依存していることを明らかにするなどの業績が認められ、晴れて准教授に。その頃から、自分の使命は、臨床とサイエンスを結び付けることだと思うようになります。どちらかに専念したいという気持ちはありませんでした。臨床には研究のヒントがたくさん隠されていますし、研究成果が臨床の幅を広げてくれますから、両者はウィンウィンの関係にあるといっていいでしょう。その後、研究ポストの教授に就きましたが、それでも臨床は続けました。私のようなケースは外科系ではあまり多くないかもしれません。時間配分などの調整は可能でしたので、恵まれた環境だったと感謝しています。19992000阪大に移った今は、研究室の体制づくりに注力しています。ざっくばらんにいえば、若い人がわくわくするような環境にしたい。トップがテーマを与えるのではなく、若手が自由な発想で取り組める環境を作れば、おそらく20年後は後者の方が成果は上がっているはずです。高齢化の進展を受け、リハビリテーションを含む整形外科の役割は、ますます大きくなっていくでしょう。もちろん分かっていないこともたくさんあります。整形外科学は痛みを扱う学問ですが、未だに痛みの評価は、10cmの線を引いて、右端が「死ぬほど痛い」、左端は「無痛」で、「今はどのあたりですか」と患者さんに指差してもらう超アナログな世界。現在は阪大工学部の方たちと、ウェアラブルなセンサーで脳波を計測して痛みを定量化する試みを始めています。阪大の強みの一つが医工連携。整形外科は、歴史を振り返っても工学との相性がよく、人工関節や手術ナビゲーションといった革新が起こったのもそのためで す。自分にとって阪大は胸躍らせる新しい環境。今も視野が広がっていることを実感しています。2011Biography1520062007201520182021DOEFF Vol. 11新しい環境に胸躍らせて。
元のページ ../index.html#17