HNF4αβ-catβ-catプラチナ抵抗性WntシグナルWウィント ntシグナルとは、動物の臓器形成・維持に欠かせない生体内の情報伝達の仕組みのこと。Wウィント ntシグナルの遺伝子が傷付くと、細胞が制限なく増え始めてがん化します。肝臓や大腸では、Wウィント ntシグナルの異常が原因でがんになる症例が多いことが 知られていますが、なぜ肝臓でWウィント ntシグナルががん化を促進するのかは不明でした。そこで松本真司准教授、原田昭和助教(分子病態生化学)らの研究グループは、異常なWウィント ntシグナルを発する細胞の「成熟度」に注目。肝臓ではHNF4αを発現する成熟した細胞ががん化することを突き止め、それを導く遺伝子GREB1の同定に成功します。さらにGREB1の発現を抑制するアンチセンス核酸を開発し、マウスの実験で腫瘍形成を阻害する効果も確認されました。肝がんの発症メカニズムの解明は着実に進んでいます。ウトィンDNA卵巣がんの病理組織標本を丹念に観察。細胞ごとに異なるタンパク質の発現パターンを地道に検証しました。FGFシグナル活性化MAPK経路の亢進抗アポトーシス異常なWntシグナル肝がんでは成熟した細胞(分化細胞)ががん化し、大腸がんでは幼若な細胞(未分化細胞、幹細胞)ががん化します。腫瘍形成を促進卵巣がん組織FGF受容体遺伝子肝がんGREB1HNF4αGREB1Target大腸がん卵巣がんにおいて、標準治療薬のプラチナ系抗がん剤に対して耐性を獲得してしまう「プラチナ抵抗性」がネックとなっています。そこで城戸完介助教、野島聡准教授、森井英一教授(病態病理学)らの研究グループは、卵巣がんの病理組織標本を詳細に検証。ゲノムを変化させるタンパク質のうち、SMARCA4が低く、SMARCA2が高く発現している特殊ながん細胞群が、プラチナ抵抗性に寄与していることを世界で初めて明らかにしました。さらに、FGF(線維芽細胞増殖因子)シグナルが活性化していることも発見。マウス実験においてFGF受容体阻害薬とプラチナ系抗がん剤の併用療法の有効性を証明しました。新しい診断システムや治療法の確立が視野に入ったといえるでしょう。DOEFF Vol. 1219Keywordペミガチニブ(FGFシグナル阻害薬)細胞FGF受容体SMARCA2FGF受容体プラチナ抵抗性抗がん剤Keyword肝細胞(分化)腸管幹細胞(未分化)肝がん克服の鍵を握る遺伝子。抗がん剤の耐性を打ち破る。
元のページ ../index.html#21