免疫チェックポイント肺胞マクロファージアクチビンAが作用肺がん細胞普段、肺胞の構造を維持するために重要な役割を担っている肺胞マクロファージが、肺がんではがんの増殖を助ける事態に。がん細胞の増殖肺TCRMHC-IT細胞PD1PD-L1TCRMHC-IT細胞活性化増殖PlexinBセマフォリン4APD1PD-L1攻撃Keywordマクロファージがん細胞がん細胞免疫にブレーキをかける仕組みである免疫チェックポイントを阻害すると、免疫ががん細胞を攻撃してくれるようになります。阻害薬の抗PD-1抗体は、さまざまながんの治療に適用され、肺がんにおいても有効性が証明されていますが、治療効果が一部の患者に限られるのが課題でした。内藤祐二朗助教、小山正平特任准教授、熊ノ郷淳教授(呼吸器・免疫内科)らの研究グループは、腫瘍内でタンパク質の一種セマフォリン4Aが高発現している肺がん患者では、T細胞が活性化・増殖し、阻害薬の効果が高いことを見出します。また、マウスモデルにおいて、セマフォリン4Aの投与により阻害薬の効果が増強することも明らかに。免疫療法のさらなる進化につながる一歩となりました。セマフォリン4AがT細胞を活性化。インターフェロンγやグランザイムBといった顆粒が産出され、がん細胞を攻撃します。松井崇浩准教授(病態病理学)、石井優教授(免疫細胞生物学)らの研究グループは、肺に多く常在している免疫細胞の肺胞マクロファージが、肺がんの環境下では、アクチビンAを介してがんの増殖をむしろ促進させてしまうことを明らかにしました。がん細胞が「敵」である免疫システムを巧妙に利用している姿が浮かび上がったのです。さらに、マウスモデルでアクチビンAを抑制すると肺がんの増殖が緩やかになること、ヒトの肺がん組織でも特に早期がんにおいて肺胞マクロファージがアクチビンAを発現していることも確認されました。今後、肺胞マクロファージが産生するアクチビンAを阻害する治療の開発や、アクチビンAに着目した肺がんの早期診断などが期待されます。20Keyword抗PD-1抗体(治療効果増強)ブレーキを外して攻撃力アップ。免疫が「敵」になるとき。
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