オルガノイド肺線維症iPS細胞マウスに導入重症化の過程で生じる血管内皮の損傷や血栓形成を抑えれば、重症化を防げます。新薬の開発も夢ではありません。血管オルガノイド血栓ILC2(リンパ球)活性化活性化リンパ球のILC2が活性化し、線維芽細胞からコラーゲンが産生されて線維化。併せて産生されたIL-33が、ILC2の活性化を助長するループとなっています。線維芽細胞産生産生IL-33コラーゲン茂呂和世教授(生体防御学)らの共同研究グループは、指定難病である特発性肺線維症(IPF)の病態解明に役立つ新たなモデルマウスを開発しました。自然リンパ球を抑制する遺伝子を欠損したマウスで実験したところ、自然リンパ球が恒常的に活性化。それにより肺線維症が自然発症することを突き止めました。これまで報告されていた上皮細胞のDNAの損傷から生じる線維化とは異なる、新しいメカニズムが明らかになったのです。さらに、IPF患者の末梢血中のリンパ球を解析し、ヒトにも同じメカニズムが存在する可能性を見出しました。今後、いまだに効果的な治療法のない肺線維症において、病態の解明のみならず、新薬の開発が大きく進展すると期待されています。新型コロナウイルスに感染すると、全身の血管で血栓ができやすくなり、多臓器不全につながることは知られていますが、そのメカニズムは明らかになっていません。武部貴則教授(器官システム創成学)らの共同研究グループは、その■に迫るべく、ヒト iPS 細胞由来の血管のオルガノイド(=ミニサイズの立体組織)を作製してマウスに導入。感染によって血管炎を発症し、血栓が形成されることを突き止めるとともに、原因となる補体(CFD)を発見しました。さらにCFDを標的とした抗体製剤の開発にも成功。サルへの投与実験によって効果を実証しました。この成果は、新型コロナウイルスをはじめとした血管に異常が生じる感染症の研究の進展に寄与するものといえます。DOEFF Vol. 1319KeywordKeyword新しいモデルマウスで難病を克服。感染症から血管を守るために。
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