最終更新日
2016.02.10

尼崎市における中皮腫および肺がん死亡の地理的集積に関するコホート研究

2016.2.10 倫理審査委員会承認

IRB承認
対象

2002(H14)年における尼崎市居住者のうち、1975年以前に尼崎市民となり継続して市内に居住していた人を住民基本台帳に基づいて固定して、コホート対象者リストの作成を依頼する。

  • 対象者数は約17万人中、1957年(S32年)から1974年(S49年)までの尼崎市内の居住歴が同定できる約8万8000人(住民になった日が現在の住所に住み始めた日と同じ<約4万2000人>か1974年以前<約4万6000人>の住民)とする。
  • 項目は、漢字氏名、性、生年月日、現住所、1975年以降の尼崎市内転居歴とする。
  • 上記コホート集団における2002(H14)年〜2015(H27)年の14年間の、死亡除票および市外転出除票の情報を付与する。
  • すべてのコホート対象者に連番(排他的識別番号)を付与した上で、さらに氏名を削除して、コホート対象者リストを作成する。
研究機関

大阪大学大学院医学系研究科環境医学、兵庫医科大学医学部環境保健学、奈良県立医科大学医学部産業疫学、産業医科大学産業保健学部労働環境学、立命館大学文学部地域研究学域、尼崎市保健所

目的

尼崎市における中皮腫死亡および他因子死亡の地理的集積をコホート研究の手法を用いて検討する。

  • 主要評価指標は、中皮腫および肺がんと他因子死亡(人口動態統計により把握)とする。
  • 1975(S50)年以前から継続して尼崎市に居住している人を、2002(H14)年点の住民基本台帳に基づいて固定し、コホート対象者とする。コホート対象者内において、2002-2015年の中皮腫及び肺がん死亡を観察する。
  • 人口動態全国死亡率を外部標準としたSMR計算を行う。
方法
  • 1957(S32)年から1975(S50)年の住民基本台帳上の尼崎市内の居住歴(居住地と居住期間)を、環境経由石綿曝露状況の指標とする。
  • 過去の地番変更に対する対応を考慮した上で、住所情報から居住地の地理的位置を特定する作業(ジオコーディング)を実施する。
  • この結果を用いて、居住地別の居住年数(居住開始年情報を含む)を集計する。基本的な単位は町丁字とする。ただし、地理的範囲が大きい町丁字など、アスベスト曝露推定の位置精度が十分でないと考えられる場合には、適宜、分析上の地理的単位を再設定する。
  • 上記の作業を遂行するために、1975(S50)年以前からの居住者の住民基本台帳住所データを地理情報システム(GIS)で管理する。ジオコーディングおよび居住者情報の地理的な位置に関するデータ管理および解析用データの準備は、GISで行う。この際、必要に応じて、過去の住宅地図資料などから1975(S50)年以前の住所と地理的位置の対応関係をデータ化し、ジオコーディングに利用する。
意義

尼崎市(2010 年国勢調査人口45 万人、全国の0.35%)においては2002-2010 年の9 年間で年平均22 例(男15 例、女7 例)の中皮腫死亡が観察されており、これは同期間の全国年平均1023 例(男809 例、女214 例)の2.2%(男1.9%、女3.2%)に相当する。職業性曝露による中皮腫を含む数値ではあるが、地域レベルとしては、世界的にみても稀にみる高頻度の中皮腫発生が観察されており、この地域における石綿曝露状況には特殊な事情があったことが強く示唆される。このような不幸な事象について、後世に対してリスク評価につながる記録を可能な限り正確に残すことが重要である。こうした調査は、旧石綿工場周辺における中皮腫過剰発生が終息するまで継続することが必要であり、今回の調査により、その基盤を構築することができる。

個人情報の扱い

1) 個人情報を含むデータは尼崎市・保健所内で処理・保管する。

2) 匿名化を尼崎市・保健所にて行い、匿名化後データを大阪大学大学院医学系研究科環境医学に移送する。ただし、住所情報については、GISを用いた解析を行う際に必須の情報となるため、番地のうち、号を除き、番までの詳細データを解析段階まで残す。その際。市内町字名はコード化し、市内町字コード表は厳重に管理する。

3) データセンターを大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室内に設置する。匿名化後のデータ管理および市内町字コード表の管理を行う。

4) 大阪大学大学院医学系研究科環境医学より中皮腫・肺がん死亡について人口動態統計死亡情報利用申出を行い、取得する。

5) データセンターにおいて、住民基本台帳、人口動態統計死亡情報、遺族調査との個人単位の照合を行う。その際、性別、生年月日、死亡年月を照合キーとして用いる。

6) データセンターから分担研究者に集計値データを配布する。市内町字コード表は、GISを用いた解析を行う場合にのみ共有する(暗号化ファイル等を用いて移送する)。

問い合わせ先

大阪大学大学院医学系研究科 環境医学 教授 祖父江 友孝

連絡先電話番号 06-6879-3920

審査結果通知書

審査結果通知(13405-4)

大阪大学医学部附属病院の倫理審査委員会(IRB)承認課題