大学院生の仲里ケイト、カロッタ・マンズ(ローザンヌ大学)、加藤教授らによる論文が公開されました
当研究室の仲里ケイト(博士課程大学院生)、カロッタ・マンズ(ローザンヌ大学)、加藤和人教授は、日本とスイスにおけるがん遺伝子パネル検査への公平なアクセスをめぐる倫理的課題を明らかにしました。
がん遺伝子パネル検査とは、患者さんのがん細胞の遺伝子変異を調べ、一人一人の病状に合わせた治療を特定しうる検査です。複数の国では、この検査の実装を事業化することによって推進している一方、患者さんのアクセスに関する公平性の課題も大きく生じていると指摘されてきました。また、これまでの先行研究は、主に欧米の現状に限られ、他の国の現状については明らかにされていませんでした。
今回、本研究グループは、文化や人口規模、医療制度が異なる日本とスイスとの間で比較研究を実施し、倫理的観点から公平性をめぐる課題を議論しました。その結果、これまで公平性の観点が議論されていなかった国の間でがんゲノム医療における公平性の問題とそれに関する共通点を明らかにし、今後、考慮されるべき点を3つ提案しました:1)がん遺伝子パネル検査の提供が可能な医療機関、2)がん遺伝子パネル検査などについての患者さん向け情報提供、3)保険収載の対象。これにより、今後の遺伝医療がより公平に実装されるための参考になることが期待されます。
本研究成果は、スイス科学誌「Frontiers in Genetics」に、1月26日(日本時間)に公開されました。
タイトル:Access, autonomy, and affordability: ethical and human rights issues surrounding multigene panel testing for cancer in Japan and Switzerland
著者:Kate Nakasato, Carlotta Manz, Kazuto Kato
論文サイト:https://doi.org/10.3389/fgene.2024.1343720