大学院生のKANG SEONGEUN、加藤教授による論文が公開されました

大学院生のKANG SEONGEUN、加藤教授による論文が公開されました

当研究室の大学院生のKANG SEONGEUN(博士課程)、加藤和人教授(医の倫理と公共政策学)は、韓国でOTC医薬品を含む経口避妊薬(OC)を服用したことのある日本人女性に半構造化インタビューを実施しました。その結果、トランスナショナルな日本人患者が直面する臨床上の倫理的課題と健康管理の類型を明らかにしました。

日本におけるOCの研究は、日本国内の状況、避妊、産婦人科・女性医学の領域での使用に限られていました。本研究は、トランスナショナルヘルスという研究視点に着目することで、日本人女性のOCの入手と服用に関する新たな健康管理の類型が特定されました。特に、帰国後に受診する際、患者と医師の間でOCへの認識が異なり、これがジレンマを生んでいる事がわかりました。この状況に対する倫理的含意を提言しました。さらに、患者中心の医療と医薬品再分類の観点から今後のアクセスについて検討しました。

今回の研究により、トランスナショナルな患者へのより良い理解や医療提供につながることが期待されます。それに加えて、本研究が「望まない妊娠」や中絶、保健教育の改善を含むSRHR課題解決の一助となり、婦人疾患やそれに基づく症状のセルフケア、ひいてはQOLの向上につながることを期待します。

本研究成果は、 2024年4月11日(木)に国際誌「Asian Bioethics Review」(オンライン)に、公開されました。

タイトル:Transnational Health and Self-care Experiences of Japanese Women who have taken Oral Contraceptives in South Korea, including Over-the-counter Access: Insights from Semi-structured Interviews
著者:Seongeun Kang, Kazuto Kato
論文サイト:https://doi.org/10.1007/s41649-024-00293-6 

※1   トランスナショナルヘルス
本研究では、患者側の視点に着目しました。自国と移住先の医療資源を状況に応じてどのように利用するか(どこで医療を受けるか、どのように医薬品を入手するか、など)を検討・判断し、国境を跨いで健康管理を行うことを指します。

※2  経口避妊薬
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合した飲み薬。エストロゲンの容量により、低用量、超低用量などに区分し、プロゲステロンの成分により、第1から第4世代に区分します。

※3  OTC医薬品
処方せんなしに薬局やドラックストアなどで購入できる医薬品(一般用医薬品、要指導医薬品)のこと。反対の概念として、医師や歯科医師の処方せんが必要な医薬品(医療用医薬品)があります。