分子生物学会

12月8~11日に神戸で行われた分子生物学会に行ってきました。この学会は生物学関係では国内最大の学会のひとつで、「巨大!」という感じです。たとえばポスター発表は4000題近くあるので、体育館のような2つの展示場に650枚ずつ張ってあって、さらに3日間総張り替えというすごさです。とても全部の発表をじっくり理解することはできないのですが、いろいろな分野の動向をざっくり見て回ることができます。

自分自身がホヤの研究に携わっていた頃は、自分の研究テーマと関連する内容の発表があったら飛びついて見に行きました。当時は当たり前のことだったのですが、今にして思えばそれはひとつの楽しみだった気がします。その代わり、今はどの研究も客観的に見るようになったので、また違ったおもしろさや楽しさがあることがわかりました。「この発表は自分には関係ない」と思ってパスするということもなくなりました。研究の進め方や着眼点という観点からいろいろな研究を見て考えるのもおもしろいです。もちろん、生物の研究に関わりながらそういうふうに研究を見ることができる人もいらっしゃるのでしょうけど。
「科学コミュニケーターは『研究の目利き』としての役割も果たしうる」ということがときどき言われますが、その意味がすこしわかった気がします。目利きになるべくがんばります。

最終日の11日には「学会と社会との接点等に関するワークショップ」が4つ行われました。私は「生命科学研究の現場と社会:双方向のコミュニケーション」に参加しました。「AdvertisementからPublic Relationsへ」、学際交流の触媒としての科学コミュニケーション、科学コミュニケーションにおける需要と供給のズレの問題、エンターテインメントとしての科学、医療の現場における科学コミュニケーション、などたくさんの話題が提供され、これからの科学コミュニケーションはこうあるべきだというモデルも複数提案されました。また、科学と宗教、または科学と文化という異質なものどうしの関係が日本と欧米ではそれぞれどうなっているかということや、文理の壁の問題、今後有効な科学コミュニケーションが継続的に成り立つために具体的にどういう枠組みが適しているか、といった活発な議論がありました。
ただすこし残念だったのは、去年の分子生物学会での科学コミュニケーションのワークショップはなかなか賑わったそうなのですが、今年は最終日の午後だったせいか、「社会との接点」関連が4つ並行開催だったせいか、お隣の会場も含めてかなり人が少なかったことです。科学コミュニケーションに関する議論は、科学コミュニケーションを専門にしている人たちだけで盛り上がっているばかりでは実りが少ないと思うので、生物の研究者をはじめさまざまな立場の方が参加しやすい工夫が大切だと改めて思いました。

(伊東真知子)