「国際生化学 ・ 分子生物学会議」

 「第20回国際生化学 ・ 分子生物学会議」に参加してきました。国際生化学 ・ 分子生物学会議は3年ごとに開催されている学会です。今大会は日本生化学の第79回大会および日本分子生物学会の第29回年会を兼ねて開催されたもので、“Life: Molecular Integration & Biological Diversity”(生命:分子の統合と生物の多様性)を基本コンセプトに、11のプレナリーレクチャー、約90のシンポジウム、約6000題のポスターセッションが催されました

今回、私の参加した最大の目的は「Education(教育)」のセッションを観ることでした。規模の大きな学会では発表演題をテーマに合わせて区切っており、今回その項目に初めて「Education」が加わりました。他のセッションがすべて「Morphogenesis(形態形成)」や「Stem cells(幹細胞)」などといった実験系であることを考えると「Education」は特殊なセッションです。しかし、新たに「Education」の項目が作られたことは、非常に価値のあることだと考えています。なぜなら、学会に訪れた実験研究者が「Education」のセッションを観ることによって、自分たちの研究を取り巻く教育問題、さらには社会問題を知ることができるからです。またそれによって、研究者が自分たちの研究を、社会からの目線で見つめ直す機会も生まれてきます。しかし、残念なことに今回の「Education」の出展演題数は多いとは言えませんでした。一般演題として申し込めるポスターセッションでは「Education」では6題のみでした(うち加藤研からの出展2題)。

今後、分子生物学会のような研究者が集まる学会で、科学コミュニケーションに携わる人たちが研究成果を発表することは重要だと考えています。科学コミュケーションを研究する組織、科学コミュニケーターを養成する組織は近年増えています。科学コミュニケーション活動を活性化し、そして維持するためにも、これらが互いに連携しあうことは重要な課題です。しかし、私たち科学コミュニケーションに携わる人たちが、現場の研究者と連携することも重要です。実際に科学を進展させる発見は現場の研究者によって生み出されます。本当に社会に必要な科学を推進していくためには、現場の研究者とのコミュニケーションが必要です。私は現場の研究者とのつながりを保ち、科学コミュニケーションのありかたを試行錯誤していきたいと思います。

来年の分子生物学会では、加藤研のメンバーもさらに積極的に出展し、また他の科学コミュニケーションに携わる人たちの出展も増加することを願っています。

(白井哲哉)