「『卵子提供─美談の裏側』上映会を開催しました」 (小門 穂)

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 2014年9月19日(金)17時から、大阪大学最先端イノベーション研究棟3階演習室1にて、「代理出産を問い直す会」と大阪大学大学院医学系研究科医の倫理と公共政策学の主催で、『卵子提供─美談の裏側」』上映会を行いました。大阪大学内外から37名が参加しました。

 

『卵子提供─美談の裏側』(原題:Eggsploitation)は、米国NPO団体The Center for Bioethics and Culture Network(以下CBC)が2010年にリリースしたドキュメンタリーフィルムです。卵子提供者を対象とするインタビューを中心に構成されており、米国内外の大学などで上映されています。
 2013年に新たな事例を加え再編集した新版が発表され、代理出産を問い直す会(代表:柳原良江、東京電機大学)がCBCとの交渉・合意を経て、新版を翻訳しました。翻訳完成後は、東京大学、久留米大学、明治学院大学、立命館大学などで日本各地において上映会を行っており、その一環として本上映会が企画されました。

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 上映会では、まず柳原良江さんからアメリカにおける卵子提供の実情や代理出産を問い直す会立ち上げの経緯などについて解説されました。続いて、45分間の映画上映が行われ、柳原さんから補足説明がありました。その後、加藤和人(大阪大学)がコメントし、柳原さんと土屋貴志さん(大阪市立大学)の対談に続き、柳原さん・土屋さんとフロアとのディスカッションが行われました。

 映画では、商業的提供を行っている斡旋業者のもとで卵子提供を行った提供者へのインタビューから、リスクに関する説明が不十分であることや過剰な排卵誘発を受けさせられていることがみてとれます。このような状況を認識した後のディスカッションでは、商業ベースであるからこのような状況が起こるのではないか、日本ではよりよい/ましな方法で卵子提供を行うことができるのではないか、という意見や、医療的なリスクの問題ではなくそもそも他者の身体に負担をかける行為は社会的に許容できないのではないか、などの意見が出されました。
 日本でも卵子提供は開始されようとしています。そのような中で、生殖補助医療を臨床の場で実施している医療関係者や関連の医学研究者や、生殖補助医療やより広く人体の利用に対して生命倫理的なアプローチを行っている研究者らが一堂に会してディスカッションする機会を持てたことをたいへん喜ばしく思いました。

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