「続・合同班会議」
6月25日~27日にかけて、特定領域研究「ゲノム」4領域(以後、ゲノム特定)の合同班会議に参加しました。ゲノム特定 (http://genome-sci.jp/) はゲノム研究に主軸をおく、文部科学省科学研究費の研究プロジェクトです。班会議では170名を超える班員による研究成果の発表があり、私も生命文化学(加藤研)の実践・研究の1つ「ゲノムひろば (http://hiroba.genome.ad.jp/)」について、ポスターセッションで発表を行いました。
私は、昨年もこの班会議に参加し、「ひとこと日誌」で感想を書きました(「2006年度はこちら」リンク参照)。今回は、今年度新たに感じたことを紹介したいと思います。
現在のゲノム特定には「1.網羅的な研究」「2.網羅的な研究から得られた1つの因子を解析する研究」「3.網羅的な研究から得られた多数の因子の働きを統合して理解する研究」の3つが混在しています。「網羅的な研究」とは、ある生命現象に関わる因子(主に遺伝子)をすべて見つけ出すような研究です。これら3つの研究すべてが生命科学全体の発展には重要です。
しかし、ゲノム特定にとって最も重要視されるべき研究は「3.統合して理解する研究」と、この研究の基盤となる「1.網羅的な研究」だと感じました。なぜなら、「統合して理解する研究」は開拓するのが困難な研究であり、この分野を進展させる環境がゲノム特定には備わっているからです。その理由は2つあります。
1つは、ゲノム特定には、「網羅的な研究」を支援する研究グループ(基盤ゲノム)が存在することです。「網羅的な研究」は個々の研究者が単独で推し進めるには困難な研究です。そこで、「基盤ゲノム」が他のゲノム研究と連携または支援することによって、個々の研究をバックアップしています。それによって「網羅的な研究」 と、その研究成果を活かした「統合して理解する研究」の推進が可能となっています。
もう1つの理由は、ゲノム特定には様々な分野の研究者が集まっていることです。「統合して理解する研究」の開拓には、既存の研究手法だけでなく、新規の解析技術・視点が必要です。このような問題には、異分野の研究者同士の連携が効果的です。「ゲノム」という1つの研究テーマに多様な研究者が集まるゲノム特定には、連携が生まれ易い環境があります。
ゲノム特定は1991年より続く5年単位のプロジェクト研究です。今年度は4代目ゲノム特定の3年目です。しかし2年後、同様の規模や形を持ったプロジェクト研究が実施されるかどうかはまだわかりません。
ゲノム特定の特徴は、このプロジェクト研究の環境だからこそ推進される「網羅的な研究」と「統合して理解する研究」があることです。また、ゲノム研究の進展に伴う社会的問題に取り組んでいることも特徴の1つです。今後も、この環境を実現することができるプロジェクト研究が継続されることを望みます。
(白井哲哉)