私たちの研究

学際連携に基づく未来志向型ゲノム研究ガバナンスの構築

この研究開発課題は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)における、ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業の「先導的ELSI研究プログラム」として採択されたものです。ゲノム医療の大きな変化を見据えながら、同事業の「先端ゲノム研究開発」(GRIFIN)と連携しつつ、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)への先導的な対応策を研究しています。

 

目的

ゲノム医学研究とその関連分野では様々な劇的変化が生じており、それに伴って新しいELSIが顕在化しつつあります。

例えばGRIFINでは、多数の提供者からの試料解析や、広範なデータの共有が行われるため、データの取得と共有に関して、また患者や市民との対話に基づく信頼関係の構築に関して、新しいELSIへの対応策が求められています。さらに、個人情報保護法および研究倫理指針の改正によって、倫理審査や研究現場での具体的な対応のあり方も見直していく必要が生じています。

こうした状況を顧みた上で、現在すでに顕在化している課題と、中長期的に検討されるべき課題との双方に取り組み、最終的に「未来志向型のゲノム研究ガバナンスの構築」に資する成果を得ることが、本研究開発課題の目的です。またその過程で、国際的な研究のネットワークを形成しつつ、若手研究者の積極的な参画を促し、次世代のELSI研究者を育成することも目指しています。

 

研究体制

研究開発は三つの班によって分担されています。

大阪大学医学系研究科教授加藤和人が代表を務める加藤班では、倫理審査のあり方の検討、研究参加における電子的手法の検討、ゲノムELSI研究のあり方の検討を行っています。

東北大学東北メディカル・メガバンク機構特任教授の長神風二が分担研究者を務める長神班では、バイオバンクの構築・運営と維持に伴う課題について研究開発を行っています。

大阪大学データビリティフロンティア機構特任講師の山本奈津子および大阪大学医学系研究科教授の岡田随象が分担研究者を務める山本・岡田班では、オミクスを含む多様なデータ保護利用の検討を行っています。

研究メンバーの詳細はこちらをご覧下さい。

 

International Symposium on Genomics and Society: Genome ELSI Kyoto 2017

近年、ゲノム医学研究のあり方は急速にグローバル化しています。新たに生じつつあるELSIは日本国内に限定されるものではなく、世界中で起きているものです。そうである以上、ELSI研究もまたグローバルなネットワークのなかで、国境を越えた対話によって取り組まれる必要があります。

こうした問題関心のもとで、「International Symposium on Genomics and Society: Genome ELSI Kyoto 2017」は企画され、開催されました。海外から著名なELSI研究者を招聘し、新しいELSIについて議論を深めながら、国内外の気鋭の若手研究者の積極的な参画を促しました。総参加者数は2日間で71名にのぼりました。当日のタイムテーブルはこちらからダウンロードしてください。

本研究開発課題では、当日の議論の模様を記録するために、記録集と動画コンテンツを作成しております。

(1)記録集

記録集では当日に講演者が発表で用いた資料をまとめ、冊子として出版しました。

(2)動画コンテンツ

シンポジウム内で行われたセッション「ELSI development: past, present and future」では、ELSIの歴史的な展開について、同分野を牽引してきたAlastair Campbell氏およびEric Juengst氏にそれぞれの視点から講演をして頂きました。これらは、特に日本のELSI研究にとって資料的価値が高いと考え、動画コンテンツを作成しました。動画は、当日に録音された音声と、発表において用いられた資料によって構成されており、YouTubeで公開されています。下からご視聴ください。

 

Alastair V. Campbell

Emeritus Director of the Centre for Biomedical Ethics in the Yong Loo Lin School of Medicine of the National University of Singapore.

Eric T. Juengst

Director of the Center for Bioethics and Professor in the Departments of Social Medicine and Genetics at the UNC-Chapel Hill School of Medicine.

 

 

主な研究成果

研究開発により、以下の報告書が作成されました。

研究における個人の遺伝情報の結果返却 検討および留意すべき事項と今後の議論・検討に向けた課題に関する提言」(長神班)
研究参加に電子的手法を用いる際の留意点」(加藤班)
「オミクスデータ共有促進ガイダンス」(山本・岡田班)
 概要版 詳細版

これらの研究の成果は、AMEDのウェブサイトでも紹介されています。
https://www.amed.go.jp/program/list/04/01/005_01.html

外部への発表等

本研究開発課題の研究成果の一覧はこちらのページをご覧下さい。