ニーズはある、あとは・・・

2月も下旬となりました。
 ここ1ヶ月ほどの出来事を一部ですが話題にしておきます。

 1月23日(日)には、東京で、生命倫理、法学、医学などの研究者が集まる研究会に参加し、科学コミュニケーションをテーマにしたセッションで話題提供をしました。1) イギリスにおける科学コミュニケーションの歴史、一方通行の情報発信から対話重視へと変化してきていること、2) 日本では突然、科学コミュニケーションが注目され始めているが、新しく育てた人材をどこに配置するか、どのような活動を行うか、理科教育との役割分担など、様々な点で模索中であること、3)そうした人材が働く場所のひとつとして、大学や研究機関に科学コミュニケーションに関するポジションを作ると良いと考えていること、などを話しました。生命倫理に関わる人たちにとっても、科学研究の現状をどう共有するかは重要な課題で、大いに議論は盛り上がりました。

 1月27日(木)には、徳島大学ゲノム機能研究センターのセミナーで話をしました。センターの将来を考えるために、「What’s next?」と題して、3回ほど外部からゲストを招いて講演会を企画されたそうで、私は2番目でした。「ゲノム研究と社会―生命倫理から科学コミュニケーションまで」というタイトルで、ゲノム研究と社会の接点における課題と取り組みについて話しました。生命倫理については、ユネスコやHUGO、そして日本の状況を紹介し、科学研究のコミュニケーションについては、23日に取り上げたような内容に加えて、「細胞の写真展」など芸術分野との共同の可能性などについて紹介しました。セミナーの前後には、センターの若い教授陣とともに、これからの研究の方向や社会・地域との関わりなどについて意見交換をすることができ、貴重な経験をすることができました。

 科学コミュニケーションや生命倫理など、科学と社会の接点を考える分野は、今、本当に面白くなってきています。確かに科学コミュニケーションにしても生命倫理にしても、ごく最近になって活発になってきた分野であり、働く場が少ない、ポストがあまりない、という問題はあります。けれども、上記のような会に出ていると、いろいろな形でニーズがあるということを強く感じます。驚くほど多くの人がこうした分野について考えようとしている。あとは、こちらが「私たちはこういうことができます、こういうことがやりたいのです。」という具体的な姿を見せていくことではないか、そうすれば働く場は自然に用意されていく、と私は確信しています。