国際プロジェクトに参加して

一ヶ月近く経ってしまいましたが、10月下旬の約一週間、米国ソルトレークシティーに行ってきました。

前半は国際ハップマップ計画の会議、後半は米国人類遺伝学会でした。国際ハップマップ計画とは、2002年から3年間の計画で進められてきた国際プロジェクトで、ヒトゲノムの多様性の分布を示す「ハプロタイプ地図」をゲノム全体について作ることを目指すものでした。開始から3年になるこの秋、当初計画した第一フェーズの研究が終了し、10月27日付けのネイチャー誌に論文が公表されました。

私はこの国際プロジェクトに「ELSI(倫理的・法的・社会的問題)グループ」の一員として参加したのですが、イギリス、日本、アメリカと場所を変えて行われた運営会議には、プロジェクトに参加するすべての研究者(実験研究やデータの分析をしている人たち)が参加するので、ヒトゲノムに関する大型の国際プロジェクトが、どのようなやり方で運営されるものであるかということを実際に体験することができました。特に、プロジェクト全体のコーディネーターとして、ヒトゲノム計画のリーダーだった米国ヒトゲノム研究所のFrancis Collins氏が参加しており、その見事な(巧妙な)リーダーシップの取り方を見て、なるほど、この人がいたから、セレラ社との大変な競争の中でヒトゲノム計画は無事進んだのだろうと感じました。
ただし、当初からこのプロジェクトはアメリカNIHの主導で進められてきており、日本を含むアメリカ以外の参加各国は、自分たちの意見をしっかりと出すように積極的に努力しないと、多くのことがアメリカの人たちの意見を中心に決まってしまう仕組みになっているのも確かでした。具体的なことはいずれどこかで紹介する機会があるかと思いますが、国際プロジェクトの面白さと難しさを垣間見ることができた3年間でした。