年度末の行事いろいろ

あっという間に3月に入ってしまいました。年度末というのは大学人にとっては何かと忙しい時期です。研究費の報告書、班会議、公開シンポジウム、などなど。いつものようにこの2ヶ月ほどの出来事をメモしておきます。

1月14日 生命科学と社会のコミュニケーション研究会。人文社会科学から科学コミュニケーションなどの実践を分析する手法について、2人のゲストに講演してもらいました。生命文化学の皆も、社会学などの既存の分野の手法についてもっと学ばなくてはならないという気持ちになりました。同時に、既存の人文社会科学分野の研究も、ある程度歴史はあっても、まだまだ現場の科学者コミュニティーに十分に影響を与えるほどのことはできておらず、科学研究の現場にダイレクトに影響を与えるような研究は我々自身が開拓していく必要があると感じました。参加者に若い学生が多く、30人ほどが懇親会で盛り上がったのは良かった。伊東さんが「ひとこと日誌」に書いたレポートも見て下さい。

1月19‐20日 東京での国際シンポジウム。ヒトゲノムのELSIについて海外から3人のゲストを招きました。ELSIについて、しかも、英語で果たしてパネルディスカッションがうまく進むのかと心配でしたが、ゲノム医学を進めるに当たっての具体的課題や市民との議論(public engagement)の効果等について、かなり突っ込んだ議論ができました。今、テープ起こしを作っており、いずれ冊子になる予定です。

1月21日 市民講座「ゲノム科学と社会」。村上陽一郎先生が文明史の中の生命科学の意味について重たい問題提起をされたのは、ちょっと驚きでした。これについても詳細はいずれ冊子になりますので、そちらで。

1月23日 京大人文研でのセミナー「ゲノム研究と社会―生命倫理から市民とのコミュニケーションまで」。シンガポールのKaanさん、NIHのMcEwenさんに、東京での国際シンポよりも、ゆっくりとお話をしていただくことができました。シンガポールの国家生命倫理委員会がどのように社会の中の多様なセクターの意見を取り入れてきたか、有名なNIHのELSIプログラムの歴史と現在、などについて詳しく聞くことができました。ELSIプログラムは、哲学から歴史学、さらにはゲノム研究に反対の立場の研究まで、実に広い分野の研究をサポートしています。日本は科研費・特定領域研究の「応用ゲノム」に社会との接点の研究課題が入って、それはそれですばらしいことですが、もっともっと多様なELSIの研究がなされる必要があるのではないでしょうか。セミナーの後、参加者も含め10名ほどで先斗町の串かつ屋で食事をしたのは楽しかった。

1月28-29日 ミレニアム特定領域「ゲノム」公開シンポジウム。どうして2週も続けてゲノムをテーマに公開シンポがあるのか、理解に苦しむところですが、とにかく相当多数の来場者がありました。僕はパネルディスカッションで「社会との接点」担当で参加してきました。(いつもやっている)進行役ではなくパネリストだったので準備が要らず、楽しむことができました。これもいずれ本になるそうです。

2月13‐14日 総合研究大学院大学での科学コミュニケーターに関するワークショップに出席。初めて総研大に行きました。かなり町から離れたところ。社会との接点といってもどんな人をどのような形で相手にするのか、簡単ではないでしょうね。とにかく、ずっと会いたいと思っていた平田光司さんにようやく会えました。

2月16-17日 科研費・特定領域研究「応用ゲノム」の班会議。企画委員会という総括班の活動を考える委員会も開催され、「応用ゲノム」としての第2回の国際シンポジウムを今年の12月に開催することが決まりました。私は信州大学の福嶋先生と一緒にELSIのセッションを再び担当します。

4月からの新入生のうちの何人かが、卒業論文や修士論文(博士課程からの編入生の場合)を終えて、春からの研究について相談に来ています。今年は新人の数がとても多く、修士課程が4名、博士課程(編入)が2名入学してくる予定ですが(さらにポスドクが2名参加)、これまでのところ、皆自分のやりたいことが結構はっきりしていることに感心させられています。

「自分でこの分野を開拓する気はありますか。自由はあるけど大変ですよ」という僕の言葉を聞いた後でも、やはり生命文化学に来たいと言ってくれた人達らしく、頼もしい限りです。

今日はこのくらいで。