細菌ゲノム合成成功のニュースと幹細胞国際シンポジウム

 米国のベンター博士たちが細菌の全ゲノムの人工合成に成功したという記事が多くの新聞の一面に出ました。私も日経新聞や時事通信にコメントを求められたおかげで原著論文をしっかり読みました。    
 今回、合成されたのはゲノムだけで、細菌として機能したわけではありません。しかし、確実に複雑な生命体の再構成に向けた研究は進んでいます。iPS細胞や再生医学だけでなく、ゲノム科学、合成生物学についての社会的議論、倫理問題の抽出も、手を抜かずに進めておくことが重要でしょう。やはり日本でも「生命科学のELSI」を担う人材がもっと増えてほしいと思います。

 1月25、26日には、東京のサピアタワーで開かれた幹細胞研究のシンポジウムに参加しました。    
 印象的だったのは、東京医科歯科大学が生命倫理センターを設置して、学内の倫理審査委員会のマネージメントを手伝ったり、専門職の育成に向けた海外との交流などの活動を進めていることでした。日本中の大学・研究機関で「倫理審査」が行われていますが、その質と効率性の確保は難しい課題で、大変参考になりました。さらに、ハーバード大学の幹細胞研究の監督のための委員会の活動についても学びました