大学院生の相京辰樹らによる論文が公開されました

大学院生の相京辰樹(現 広島大学医学部5年生、当研究室の共同研究員)、加藤和人教授、古結敦士助教は、日本の生命倫理専門調査会におけるヒトゲノム編集の研究ガバナンスに関する議論を分析し、その過程において研究コミュニティ・政府・一般市民が果たした役割を明らかにしました。

 

ゲノム編集は、生物のゲノムを正確かつ効率的に改変することができる技術です。なかでもヒトゲノム編集には、医学的研究・臨床に応用できる可能性がありますが、技術的なリスクや倫理的・法的・社会的課題(ELSI)も伴います。そのため、ゲノム編集をどのように用いるべきかという問題は活発に議論されてきました。特に、研究者を中心とする研究コミュニティがこの問題に強い関心を持って、国際的な議論の場を設けてきました。また、研究者ではない人々がゲノム編集の議論において積極的な役割を果たす可能性や、研究規制における政府機関の役割も注目されてきました。しかしながら、これらの様々な立場の人々(ステークホルダー)のゲノム編集ガバナンスへの関わり方を包括的に検討し、記述的に明らかにする研究はこれまでありませんでした。

 

今回、研究グループは、日本の内閣府に設置された生命倫理専門調査会に注目し、ヒトゲノム編集の研究ガバナンス(特に研究倫理審査体制)に関する議論と、その過程におけるそれぞれのステークホルダーの関わり方を分析しました。研究結果からは、新興医学技術のガバナンスには専門家、市民、患者など様々なステークホルダーが関与できること、一般市民は専門家と異なる方法で複数の関わり方をしていることなどが明らかになり、多様なステークホルダーが関与するガバナンスの確立のためには一般市民の役割に関する検討が重要であることが示唆されました。

本研究成果は、2023年4月26日(水)に「Asian Bioethics Review」に掲載されました。

タイトル:“Stakeholder Involvement in the Governance of Human Genome Editing in Japan”

著者名: Tatsuki Aikyo, Atsushi Kogetsu, Kazuto Kato

論文サイト https://doi.org/10.1007/s41649-023-00251-8