大学院生の濱川菜桜らによる論文が公開されました。

当研究室の濱川菜桜氏(博士課程大学院生)、加藤和人教授らは、大阪大学大学院人間科学研究科山本ベバリー・アン教授、オックスフォード大学ジェーン・ケイ教授らと共に、日・英・米における情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を用いて患者参画を行う医学研究の近年の動向と、患者参画の具体的な方法について、体系的に把握する論文を発表しました。
近年、英米を中心に医学研究における患者参画が活発に推進されるようになり、様々な取り組みについてこれまで多数報告されてきました。一方で、ICTを用いた取り組みについては、現在どの程度の規模で実践が行われているのか、また、ICTを用いてどのような患者参画が可能となるのか、という点については十分に明らかにされていませんでした。
本研究は、スコーピングレビューと呼ばれる文献検索手法を用いて、日・英・米の3ヵ国の実践状況について調査しました。その結果、21のプロジェクトにおいて、患者がインターネット上で医学研究に参加するだけでなく、研究者と対等な立場として主体性を発揮する「患者参画」が実践されていることを同定しました。さらに、ICTを用いた患者参画の具体的な方法として、オンラインプラットフォームを利用したリサーチクエスチョンの提案や、運営委員会に患者が参加することで、研究デザインや運営の意思決定プロセスに患者の視点が反映されていることが明らかになりました。
このようにICTを利用した新しい患者参画の動向や、具体的な患者参画の方法について具体的な知見が得られたことで、今後、医学研究における患者参画の新しいアプローチの確立に寄与することが期待されます。

本研究成果は、2020年8月4日に国際科学誌「Journal of Medical Internet Research」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Landscape of Participant-Centric Initiatives for Medical Research in the United States, the United Kingdom, and Japan: Scoping Review”
著者名:Nao Hamakawa, Rumiko Nakano, Atsushi Kogetsu, Victoria Coathup, Jane Kaye, Beverley Anne Yamamoto, Kazuto Kato

論文サイト
https://www.jmir.org/2020/8/e16441/