大学院生の仲里ケイトらによる論文が公開されました

当研究室・修士課程大学院生の仲里ケイトさん、加藤和人教授、大学院人間科学研究科の山本ベバリー・アン教授は、日本、英国、オーストラリアのPGT-M(単一の遺伝子に対して遺伝子異常を調べる着床前診断)に対する規制の枠組みを比較、検討し、各国において、PGT-Mを利用するための医学的適応、申請の審査方法(疾患リストの有無やケース・バイ・ケース審査など)、審査の際に考慮すべき観点(レビュー・フレームワーク)を明らかにしました。

着床前診断(PGT)は、体外受精の際に、子宮に移植させる前の胚を診断するために用いられる技術です。なかでも、単一の遺伝子に対して遺伝子異常を検査する PGT-M は、遺伝的リスクのある人が、深刻な遺伝的疾患を受け継ぐことなく、遺伝的関連のある子どもを 持つための新たな選択肢が生まれます。諸国の PGT-M に対する規制の枠組みを比較した先行研究において、 多くの先進国では PGT-M の利用が「重篤な」遺伝性疾患をもつ子の誕生を避けることに限定されていると示されています。しかしながら、疾患の重篤性を定義するための基準や要因と、これらに基づいて PGT の申請を 審査するための観点は、明確に記述されていませんでした。

今回、研究グループは、日本、英国、オーストラリアの PGT-M に対する規制の枠組みを検討し、比較ケーススタディを実施しました。研究結果からは、PGT-M に関する規制の方法は、幅広いステークホルダーに対して 医学的・社会的影響を及ぼす可能性があり、その影響は、ある特定の疾患に関するケースが承認されるかどうかだけでなく、審査方法自体によっても生じうるということが示唆されました。

本研究成果は、2022 年 5 月 18 日(水)に「Human Genomics」に掲載されました。

タイトル:“Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia”

著者名: Kate Nakasato, Beverley Anne Yamamoto, Kazuto Kato

論文サイト https://doi.org/10.1186/s40246-022-00390-3