ひとことで言うと
放射線レポートに含まれる所見や臨床的に重要な記載について、診断の確からしさを5段階で分類し、深層学習モデルで高精度に自動判定できることを示した研究。
Keywords
放射線レポート、診断確信度、AI(機械学習)、自然言語処理、医療従事者支援
なぜこの研究をしたのか
放射線レポートでは、異常構造や臨床的に重要な所見を伝えるために、しばしば曖昧な表現が使われる。たとえば「肺癌を示唆する」「肺癌より炎症性変化らしい」といった表現の違いにより、臨床医がレポート内容を誤って解釈する可能性がある。また、レポートを二次利用する際には、否定された所見や不確実な所見を除外する必要があり、この曖昧さが課題となる。
どう調べたか
診断確信度を、definite、likely、may represent、unlikely、denial の5段階に定義した。大阪大学医学部附属病院の放射線情報システムに保存された2010年から2018年の日本語胸部CTレポート118,078件のうち、540件をランダムに選び、深層学習モデルの学習と評価に用いた。
3名の医学生が、レポート内でハイライトされた観察所見および臨床所見の語句に対して、事前定義された確信度クラスを付与した。アノテーションの不一致は多数決で解決し、多数決で決められない場合は臨床医が解決した。540件のレポートでは、合計4,485個の観察所見および臨床所見の語句がアノテーションされた。
分類モデルにはBERTを用いた。対象語句の範囲をモデルに示すため、対象語句の前後にエンティティマーカーを挿入し、各語句について診断確信度クラスを予測した。
何がわかったか
深層学習モデルは、strict metricでmicro F1-score 97.61%を達成した。denialクラスのstrict F1-scoreは98.89%であり、否定表現の検出において高い性能を示した。
一方で、may representクラスとunlikelyクラスは、definiteやdenialに比べてstrict metricでのF1-scoreが低かった。ただし、隣接するクラスの違いを許容するrelaxed metricでは全体のF1-scoreが98.91%となり、全クラスでF1-scoreが向上した。
なぜ大事なのか
放射線レポートに含まれる曖昧な診断表現を自動的に整理できれば、臨床医によるレポート解釈の誤りを減らす助けになる。また、否定的または不確実な所見を識別できるため、放射線レポートを二次利用する際のキュレーション済みデータセット構築にも貢献しうる。
次に目指すこと
本研究の限界は、単一施設のレポートのみを用いてモデルを学習・評価している点である。汎化可能性を確認するためには、施設外のデータセットを用いた研究が必要である。