ひとことで言うと
NDBオープンデータの複数年度の処方数データにSelf-Organizing Mapを適用し、日本における薬剤処方の時系列パターンと小児で増加傾向を示す薬剤の特徴を分析した研究。
なぜこの研究をしたのか
臨床現場で医薬品を適切に選択するためには、医薬品の処方トレンドを把握しておくことが重要である。レセプトデータは処方トレンドの解析に適しており、NDBデータベースは日本の保健制度に基づく悉皆性に優れたデータベースである。一方で、NDBオープンデータは年度単位で集計されており、年度を跨いだ網羅的な時系列解析に関する報告は存在しないことから、本研究が行われた。
どう調べたか
NDBオープンデータの各回の「外来(院外)性年齢別薬効分類別数量」データを取得し、5歳区切りで集計されたデータのうち、15歳未満を小児用、20歳以上を成人用として解析した。複数年度の処方数データに教師なしクラスタリング手法であるSelf-Organizing Map(SOM)を適用し、各クラスターの時系列パターンを「増加」「維持」「減少」「傾向なし」に分類した。さらに、小児で処方が増加傾向を示す薬剤を抽出し、先発品(後発品なし)に絞ったうえで薬効分類を集計し、添付文書における適応に関する記載の有無を確認した。
何がわかったか
SOMによる解析では、225クラスターのうち、増加71、維持61、減少77、傾向なし16に分類された。薬剤単位では、成人で増加1548、維持2452、減少1802、傾向なし200、小児で増加934、維持1968、減少872、傾向なし88であった。
小児で処方が増加傾向を示した薬剤のうち、先発品(後発品なし)80剤を集計したところ、薬効分類のTop3は「精神神経用剤」「その他の中枢神経系用薬」「その他のアレルギー用薬」であった。成人では179剤に絞った集計で、Top3は「その他の腫瘍用薬」「糖尿病用剤」「抗ウイルス剤」であり、小児とは異なっていた。
なぜ大事なのか
NDBオープンデータの処方数データに時系列パターン解析を適用することで、薬剤処方トレンドの把握や、小児で処方が増加している薬剤の特徴分析など、さまざまな応用が可能になると考えられる。
次に目指すこと
本研究では小児処方が増加傾向を示す薬剤の特徴分析を例として示したが、同一薬効分類内での薬剤クラス間のトレンド比較など、他の応用分析も可能である。