ひとことで言うと
保険データに画像診断レポートの自然言語処理結果を組み合わせることで、肺癌症例の同定感度が向上する可能性を示した研究。
なぜこの研究をしたのか
リアルワールドデータを用いた大規模研究では、保険データやDPCデータからアウトカムを定義することが多いが、その定義が真の臨床アウトカムとどの程度一致するかを検証するバリデーション研究が必要とされる。
本研究では、保険データのみを用いた肺癌抽出アルゴリズムと、画像診断レポートを自然言語処理で解析した結果を組み合わせたアルゴリズムを比較し、両者の違いを明らかにすることを目的とした。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院の2016年から2018年のデータを対象とした。
病名情報はレセプトおよびDPCデータから取得し、手術、薬物療法、放射線療法に関する診療行為コードはDPCデータから取得した。ゴールドスタンダードとして、がん登録データを使用した。
対象疾患は肺癌とし、病名登録日をindex dateとして、その日から180日以内にがん登録があった症例を真のケースとした。
画像診断レポートについては、著者らが開発した自然言語処理アルゴリズムを用い、「がん」などの所見を抽出し、文脈から確信度を「肯定・疑い・否定」として構造化した。「肺癌」の所見で確信度が「肯定」または「疑い」と判定されたものをレポート陽性症例とした。
評価した肺癌抽出アルゴリズムは以下の2つである。
- ベースライン:病名と治療、すなわち手術・薬物療法・放射線療法の組み合わせ
- 病名+治療 or レポート:ベースラインに加えて、画像診断レポートから自然言語処理により「肺癌」として抽出された所見情報を組み合わせたもの
何がわかったか
ベースラインのアルゴリズムでは、感度は85.1%(212/249)、陽性的中率は75.7%(212/280)であった。
画像診断レポートを組み合わせた場合、感度は88.3%(220/249)に向上した一方で、陽性的中率は74.4%(220/293)とわずかに低下した。
偽陰性は、ベースラインでは37例であったが、画像診断レポートを組み合わせたアルゴリズムでは29例に減少した。レポートを組み合わせることで、治療歴がないががん登録がある症例を15例拾い上げることができた。
一方で、治療歴がなくがん登録もないがレポートで陽性となった症例が41例出現した。これらは、経過観察中の早期肺癌など、その時点ではがん登録されない例がほとんどであった。
なぜ大事なのか
画像診断レポートを保険データと組み合わせることで、レセプトデータのみを用いた場合と比較して、肺癌同定における感度の向上がみられた。
また、診断のみでがん登録された症例や、積極的な治療が行われなかった症例の捕捉に寄与する可能性が示された。
さらに、他臓器癌や転移による偽陽性の低減にも寄与する可能性が示唆された。
次に目指すこと
がん登録は原則として確定診断後に行われるため、臨床診断でがんが疑われていても登録されていない例がある。
そのため、画像診断レポートで陽性となる症例と、ゴールドスタンダードであるがん登録との間に生じるギャップについて、今後さらに検討を進める必要がある。