大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

Improving MedDRA/J Coding Accuracy with a Fine-Tuned Text Embedding Model

ファインチューニングしたテキスト埋め込みモデルによるMedDRA/Jコーディング精度の向上

年度
2025
タイプ
学会発表
キーワード
AI(機械学習), 有害事象, 自然言語処理
Authors
Shoya Wada, Masaharu Okamoto, Kento Sugimoto, Yasushi Matsumura, Katsuki Okada, Shozo Konishi, Takuya Hara, Jun Kato, Tadashi Matsuno, Saki Nakano, Toshihiro Takeda
Journal
Stud Health Technol Inform. 2025 Aug 7;329:1812-1813. doi: 10.3233/SHTI251227.
学会
MEDINFO 2025
開催地
Taipei, Taiwan
PMID
40776244
doi
10.3233/SHTI251227

ひとことで言うと

辞書にそのまま載っていない有害事象の言い換え・同義語・口語表現を、自然言語処理モデルによって適切なMedDRA/J用語候補へ結びつけ、医薬品安全性業務の効率化を目指した研究です。

Keywords

自然言語処理, AI(機械学習), 医療従事者支援, 医療情報DB, pharmacovigilance

なぜこの研究をしたのか

医薬品の安全性管理では、有害事象を国際的な標準用語であるMedDRAに対応づける「MedDRAコーディング」が重要です。

しかし、実際の報告では「胃が痛い」のような口語的な表現や、辞書にそのまま存在しない言い換え表現が多く含まれます。既存のMedDRA/J検索ツールは完全一致や部分一致には対応していますが、こうした表現の揺れには弱く、担当者が適切な用語を思い出して検索する必要がありました。

本研究は、この作業負担を減らし、より正確にMedDRA/J用語を検索できるようにすることを目的としています。

どう調べたか

MedDRA/J ver. 27.0の用語と、塩野義製薬の社内有害事象データベースを用いました。

社内データには、有害事象の表現とMedDRA/Jの最下層語(LLT)との対応が含まれており、MedDRA/Jに元から含まれる組み合わせを除いたうえで、71,813件の表現・LLTコードの組み合わせ、45,395種類の有害事象表現を解析対象としました。

比較対象として、部分一致検索を模したJaccard index、Word2Vec、GLuCoSE v1、GLuCoSE v2を用い、さらにGLuCoSE v2をMedDRA/J用語と社内データで追加学習したモデルを評価しました。

また、検索結果の上位候補をさらに並べ替える方法として、大規模言語モデル(LLM)によるリランキングも検討しました。

何がわかったか

社内データを用いて追加学習したGLuCoSE v2モデルは、従来手法より高い性能を示しました。50,000件の社内データを用いた場合、nDCG@20は76.2%、Recall@20は90.8%、Recall@100は95.4%でした。

また、社内データを検索対象に加えること自体が性能向上に大きく寄与しており、最新モデルを導入するだけでなく、現場で蓄積された実データを活用することの重要性が示されました。

Effect of in-house database volume on model performance metrics (nDCG@20, Recall@20, Recall@100) across methods.

LLMによるリランキングでは、初期検索で20位から100位に入っていた難しい症例について、適切なLLT候補を上位に押し上げられる可能性が示されました。

なぜ大事なのか

MedDRAコーディングは、医薬品の安全性情報を正確に集計・報告するための基盤です。

この研究は、現場で使われる自然な日本語表現を、標準化されたMedDRA/J用語へより正確に対応づける方法を示しました。これにより、担当者の検索負担を減らし、コーディングのばらつきを抑え、医薬品安全性監視の質を高めることが期待されます。

さらに、ICDやSNOMED CTなど、他の医療用語体系への応用可能性もあります。

次に目指すこと

本研究では、入力表現が実際の原文そのものではなく、登録担当者によって整理された表現を含んでいる点が限界として挙げられています。また、外部データによる検証は今後の課題です。

今後は、より実際の報告文に近いデータでの評価や、MedDRA/Jの階層構造をさらに活用した学習方法、LLMを組み合わせた実運用向けの検索支援ワークフローの検討が期待されます。