ひとことで言うと
患者が入院前に入力した電子問診の内容を、看護記録に自動引用できる形に変換することで、看護師の記録時間を短縮し、記録内容も充実させられることを示した研究です。
なぜこの研究をしたのか
看護師の業務では、電子カルテへの記録作成が大きな負担になっています。入院時の看護アセスメントでは、患者から聞き取ったADL、食事、喫煙・飲酒、生活状況などを看護記録として整理して入力する必要があります。
しかし、患者の訴えや回答をそのままコピーするだけでは、医療者が使う看護記録にはなりません。患者向けの表現を、看護記録に適した形式や用語に変換して活用する仕組みが必要でした。
どう調べたか
研究チームは、電子カルテと連携する入院前電子問診システムを開発しました。患者はスマートフォンやタブレットで問診に回答し、その内容が病院情報システム内に保存されます。
回答データは、看護システム上の「患者プロフィール」にあらかじめ対応づけられた項目へ自動的に引用されます。この仕組みは、患者向けの表現を医療用語に変換したり、複数の回答を統合したり、飲酒量などを計算したりできるよう設計されました。
評価では、2022年4月から12月に電子問診の使いやすさを患者に調査し、2022年8月から12月に予定入院した患者について、電子問診を使った場合と使わなかった場合で、看護師が患者プロフィールを入力する時間を比較しました。
何がわかったか
電子問診に回答した患者のうち、78%は自分で回答できました。また、自分で回答した患者の88%が「入力しやすい」と評価し、85%が「今後も使いたい」と答えました。
看護記録への効果としては、電子問診を使った群では患者プロフィールの入力時間が有意に短くなりました。特に内科病棟やADLに介助を要する患者では、記録内容の量を保ったまま、入力時間が13〜18%、つまり約1.3〜2分短縮されました。
一方で、外科病棟やADLが自立している患者では入力時間そのものは大きく変わりませんでしたが、同じ程度の時間でより多くの情報が記録されていました。
なぜ大事なのか
この研究は、患者自身が入力した情報を、看護記録に使いやすい形へ安全に取り込むことで、看護師の記録負担を減らせる可能性を示しています。
単なる問診の電子化ではなく、患者の言葉を看護記録に適した情報へ変換・引用する点が重要です。記録時間の短縮は小さく見えても、入院時アセスメント以外の看護記録にも展開できれば、看護業務全体の効率化につながる可能性があります。
また、記録内容が充実すれば、患者の状態把握、ケアの質向上、将来的な臨床研究へのデータ活用にも役立つと考えられます。
次に目指すこと
今後は、対象とする看護アセスメントや記録項目を広げ、より多様な診療科・患者背景で効果を検証することが課題です。
特に、高齢者やデジタル機器に不慣れな患者では代理回答や支援が必要になるため、患者負担を増やさずに使える設計が重要です。また、記録時間の短縮だけでなく、記録の正確性、看護師の業務負担感、患者ケアへの影響まで評価していく必要があります。